はたして罰則は労基法違反の制裁として機能しているのか
むしろ、今回のことで課題として浮き上がってくるのは、「労働基準法違反に対する罰則があまりに低すぎる」という点ではないでしょうか。
今回の事件では、社員の方が亡くなるという痛ましい結果が起きてしまいました。また、違法な長時間労働が常態化していたという会社の体質も指摘されています。このような事件の内容にもかかわらず、略式手続で処理される程度の罰則しか予定されていないというのは、少々違和感を覚えます。
罰則の引き上げは、様々な要素を考慮して慎重に検討される必要がありますが、それでも、企業に対する罰則として「30万円以下の罰金」しか予定されていないというのは制裁として小さすぎるように思います。
企業が守るべきルールを定める他の法律、例えば独占禁止法や金融商品取引法などが違反行為に対して高額な罰金・課徴金を予定しているのと比較すると、あまりにも低い金額です。
特に大企業からすると、刑罰を受けることに「見せしめ」以上の不利益はないでしょう。刑罰が見せしめにすらならないような本物のブラック企業の場合、もしかすると何の歯止めにもならないかも知れません。
長時間労働は社員の健康に悪影響を及ぼすだけでなく、企業の生産性に必ずしも貢献していないというデータもあります。労働基準法違反に対しては、まずは法を厳格に適用することに加え、罰則の引き上げも検討される必要があるのではないかと考える次第です。
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