2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年7月28日

 この社説は、基本的には的を射た良い社説です。

 トランプ政権の対中東政策は一言で言うと、バランスを欠いています。サウジを、「価値を共有する同盟国」などと持ち上げています。サウジは基本的人権を尊重するよりも、イスラム原理主義に基づく国であり、トランプのこういう発言がどこから来るのか、理解に苦しみます。あえて比較すればということですが、サウジよりもイランの方がまだ民主主義的です。

 トランプのサウジ贔屓がサウジのイラン嫌いと共鳴し、イランを敵視することにつながっているのですが、これは感心しません。カタール孤立化をサウジなどがやっていますが、これもトランプの支持を得た上でということのようです。

 中東は複雑に諸勢力が入り混じってそれぞれの利益を追求している地域です。紛争は数多く起こっています。米国は、紛争当事国より少し距離を置いて、中東安定化を進める仲介役になる方が中東の安定に資するのではないかと思われます。ところが、トランプは中東の諸勢力を敵味方に二分する単純な思考で複雑な情勢に対処しようとしています。これでは失敗の可能性が高いです。失敗した時に、さらなる介入になるのか、あるいは「あとは野となれ山となれ」の介入縮小になるのか、今の時点で判断できません。

 米国の中東政策のあり方には諸々の意見があり百家争鳴の場になりますが、それがゆえにしっかりとした政策レビューを行っておくべきで、マクマスター国家安全保障補佐官主導でそれをやるべきなのでしょう。

 この社説にも言及がありますが、イランはシリアの「イスラム国」の拠点を弾道ミサイルで攻撃しましたが、この弾道ミサイルはイラン領内から発射されました。この射程であれば、イスラエルは射程内に入ることになります。イスラエルは、現在のミサイル防衛の有効性を再検討する必要に迫られている可能性があります。

 また、ロシアが脅しを実行し、米軍機を打ち落とすようなことをすれば、冷戦時代にもなかった米ロの軍事的な直接対決にエスカレートしかねません。これも大変危険なことです。

  
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