2024年4月20日(土)

安保激変

2017年8月4日

 レッドラインがあるとすれば、北朝鮮がICBMを実戦配備し、対米核攻撃が可能になる時だろう。では、それはいつになるだろうか。

 北朝鮮は7月28日のICBM試射を行う数日前から、同国西部でICBMのテストをする動きを見せており、朝鮮戦争休戦64周年にあたる27日に発射するのではないかと米国などが警戒していた。しかし、実際には北部の中朝国境付近から、しかもこれまでのように朝ではなく深夜に発射し、どこからでも、そしていつでも奇襲攻撃できる能力を誇示した。

 北朝鮮は、米国の独立記念日である7月4日に初めてICBMの試射を行ったが、その際も「火星14号」をロフテッド軌道で打ち上げており、約2800キロまで上昇、およそ40分間飛行した後、日本海に着水している。通常軌道で発射されていた場合、アラスカやハワイが射程に入ったと考えられていた。わずか3週間ほどの間に、「火星14号」の射程が相当伸びたことがわかる。

 北朝鮮は、今年の3月18日にICBM用とみられるロケットエンジンのテストを行った。このエンジンがICBM開発の大きな進展につながった。北朝鮮が5月に試射した中距離弾道ミサイル「火星12号」も、ICBMである「火星14号」も、この時にテストしたエンジンの改良型を搭載していると考えられるからだ。北朝鮮が、ニューヨークやワシントンを射程に収めるICBMを試射するのは時間の問題だろう。

北朝鮮は暴走しているわけではない

 しかし、いくらミサイルの射程距離が伸びても、ミサイルに搭載できるように核弾頭を小型化し、さらにその弾頭が宇宙空間から大気圏への再突入時の摩擦熱に耐えられるようにしなくては、戦略兵器としては使えない。

 北朝鮮が核弾頭の小型化に成功しているかどうかについては、専門家の間でも意見が分かれる。ただし、中国など他国の例をみても、4回から5回の核実験で小型化に成功しており、すでに5回の核実験をした北朝鮮が核弾頭の小型化に成功している可能性は高い。北朝鮮は6回目の核実験の準備もしており、さらなる小型化を追求するだろう。

 再突入については、28日のICBMの試射では、NHKが捕らえた映像で再突入体が大気圏内で燃え尽きているように見えるため、失敗した可能性がある。しかし、北朝鮮は、今後もミサイルの試射を続ける中で、再突入技術を完成させるだろう。また、ICBMより射程距離の短いミサイルについては、弾頭の小型化と再突入の技術水準がICBMよりも低いため、すでに核弾頭を搭載して実戦配備されている可能性も否定できない。

 北朝鮮の核ミサイル能力については、過剰評価するべきではないが、過小評価もするべきではない。しかし、再三にわたる国際社会からの警告と制裁にもかかわらず、北朝鮮は失敗を恐れることなくミサイル開発を続けている。対米核攻撃能力の保有は間近とみるべきだ。


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