2022年12月9日(金)

高口康太の「中国ビジネス最前線」

2017年8月28日

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高口康太 (たかぐち・こうた)

ジャーナリスト

1976年生まれ。千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。中国・南開大学に留学後、ジャーナリストとして活躍。著書に『幸福な監視国家・中国』(共著、NHK出版)など多数。千葉大学客員准教授を兼務。

 この爆発的な普及の背景について、楊さんは次のように説明する。

写真を拡大 杭州市のアリペイ払い駐車場

 「中国の若者は新しいサービスを受け入れる能力がきわめて高かったのです。オフラインでのモバイル決済はちょうどスマートフォンの普及と同じタイミングだったので取り入れやすかったという側面もあります。中国だけではなく、インドもスマートフォンの普及期にQR決済が普及したので、爆発的な成長を見せました。アントフィナンシャルが提携するPaytmはすでに500万の加盟店を擁しています。一方で先進国ほど新しいQR決済の受け入れは難しいというのが実感です」

 上述のリープフロッグ現象に加えタイミングがよかったとの分析だが、私見を付け加えるならば、莫大なマーケティング費用が投下されたことも大きい。「アリペイ払いで代金をキャッシュバック」といったキャンペーンが大々的に展開されたのだ。今年8月1日から8日まで行われた「無現金週間」のキャンペーンでは、毎日88万人に抽選で純金がプレゼントされた。また決済手数料の安さも拡大の要因だ。代理店経由の契約では業種ごとに違うものの平均で0.6%未満だ。小店舗や屋台などで使われるユーザースキャン型では、決済手数料は無料である。(銀行口座振り込み時に0.1%の手数料)。

 上述したとおり、日本では「中国は偽札が多いからモバイル決済が流行った」との説が広がっているようだ。偽札リスクがないのはもちろんメリットだが、それ以上に利便性の高さが普及を牽引したことをおわかりいただけただろうか。

写真を拡大 杭州市のアントフィナンシャル本社ロビー

 ここまでモバイルインターネット、モバイル決済がなぜ爆発的に普及したのか、利用者にはどのような利便性があるのかを見てきた。では運営会社にとっては莫大なマーケティング費用を投じた価値はどこにあるのだろうか。その答えは『ビッグデータ」にある。もはやバズワードとして聞き飽きた感のあるビッグデータだが、中国IT業界ではスマートフォンを通じて収集された大量のデータによって次々と革新的サービスが生み出されつつある。次回はその実情をリポートする。

(※写真はすべて筆者撮影)

 

  
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