2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年9月25日

 トランプ大統領は8月21日に、アフガニスタン戦略に関する演説をしました。これに関して、ザルメイ・ハリルザード元駐アフガニスタン米国大使が、この演説を手放しで称賛する論説を、8月23日付けニューヨーク・タイムズ紙に寄稿しています。要旨は次の通りです。

(iStock.com/solargaria/Tomacco/yayayoyo/Dacian_G/Daniel Cole)

 トランプ大統領の新しいアフガニスタン戦略は称賛に価する。果敢で熟考されたものである。成功の可能性がある。しかし、地域の反対に遭うであろう。大統領は揺るぎないコミットメントを示し、その計画を妨害する敵対勢力に立ち向かう用意がなければならない。

 トランプはアフガニスタンとその地域における米国の重要な安全保障上の利益を認識している。それはイスラムの過激主義とテロの脅威であり、核戦争の可能性ですらある。トランプはアフガニスタンを放棄することはテロ組織のための聖域の出現を再び許すことになると認識している。

 新しい戦略は包括的であるばかりでなく米国の政策の大きな発展である。米軍が増派されるが、増派される兵力の撤退の時刻表を設けていない。時刻表はオバマ政権が犯した間違いであった。もう一つのオバマ時代との大きな違いは、タリバンその他の反乱勢力と戦うアフガン部隊を支援するについて、現場の米軍司令官に行動の柔軟性を認めたことである。また、悪化する軍事情勢にかかわらず和解を追求したオバマ大統領とは違い、トランプは和平協議に現実的な立場を取っている。

 新たな戦略の鍵となる要素はパキスタンに対する新たなアプローチである。二人の前任の大統領とは異なり、トランプはパキスタンが裏表のある行動をしているという事実を取り上げることを選択した。パキスタンはパートナーのふりをして米国の大きな援助を貰う一方で、タリバンおよびハッカニーに聖域と支持を与えていると明白にいってのけた。この米国の政策の変更は米国がパキスタンに対する支援と援助を止めることを意味する。またパキスタンが敏感であることを慮って、アフガニスタンについて、あるいはより広く、インドとの戦略的パートナーシップを強化することを躊躇しないとの合図を送った。

 トランプが目標を達成するには、三つの枢要な分野がある。第一には、兵力増派と並行した外交努力が必要で、最善の方策は大統領特使を任命することである。その任務はアフガニスタンの指導者と協力して彼等の改革と経済発展のコミットメントを実現させることである。

 第二に、トランプはパキスタンが抵抗しトランプの決意を試そうとすることに備えなければならない。パキスタンはアフガニスタンにある米国の資産を攻撃し、あるいはアフガニスタンとパキスタン国境の補給ルートを妨害するかも知れない。しかし、トランプは効果的な対抗措置を取ることが出来る。米国は軍と情報機関の高官に旅行制限や銀行口座の凍結などの制裁を課すべきである。すべての米国の援助を停止し世銀とIMFが同様に行動するよう影響力を行使すべきである。パキスタンをテロ支援国家に指定することを検討すべきである。パキスタン領内のテロリストの潜伏場所を攻撃すべきである。そしてパキスタンの行動の変化がアフガニスタンにおける暴力の低下という結果で明らかになって始めて米国は関係修復に動くということをパキスタンに明らかにしておくべきである。

 第三に、トランプはアフガニスタンの指導者が米国に協力し国のガバナンスを改善するためのインセンティブを与えねばならない。トランプは「勝つ」ことを望んでいるが、そのためには、アフガン社会の協力と主たる政治勢力のコミットメントが必要である。

 新たな果敢な戦略はトランプの支持層には不人気かも知れないが、新たなアプローチが有効だと示し得れば、国内の政治的離反を抑制することが出来るであろう。

出典:Zalmay Khalilzad,‘Why Trump is right to get tough with Pakistan’(New York Times, August 23, 2017)
https://www.nytimes.com/2017/08/23/opinion/trump-afghanistan-pakistan-strategy.html


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