10月21日付の英フィナンシャル・タイムズ紙は、「ロシアの管理された民主主義の限界。有権者は見せかけのクレムリン政治に興味を失いつつある」との社説を掲げています。社説の論旨は、次の通りです。
テレビの司会者で、社交界の名士クセニア・サプチャクの来年のロシア大統領選挙への立候補は、面白くない選挙に、少なくとも陰謀説を付け加えた。一時プーチンのボスで保護者であった人の娘として、彼女は申し分のないエリート関係を持っている。彼女はプーチンが名付け親であるとの噂は否定している。
サプチャクの立候補宣言は、反クレムリンの人々には良く思われていない。彼女の立候補は広報目的のもので、有力反対派候補、ナヴァルヌイ(今はでっち上げの告訴により立候補が禁止されている)の票を減らすと多くの人は見ている。彼女はプーチンから選挙に出るように説得された妨害者と疑われている。
ナヴァルヌイは彼女を、有権者の注意をそらすために「リベラルな笑い草を立候補させるクレムリンのゲーム」の一部と呼んだ。
36歳のサプチャクは、選挙に選択肢を与え、「すべてに反対する」候補になると表明している。しかし彼女の綱領は彼女の内容のなさを確認するようだ。
サプチャクとナヴァルヌイ以外の候補者は、共産主義者ジュガーノフ、民族主義者ジリノフスキー、リベラルのヤブリンスキーであるが、彼らは政治の場に4半世紀いる。プーチンは18年間ロシアの最高指導者であった。スターリン以来の最長のクレムリンの主として、彼はブレジネフを追い越した。
プーチンは第1期の大統領時代、「管理された」民主主義を作り上げ、議会の政党も牛耳った。しかし彼は新しい役者を導入することには失敗した。
管理された民主主義で、「正しい」候補や政党が勝つようにするとともに、投票率も高くした。しかし世論調査によると、有権者は見せかけのロシア政治に興味を失ってきている。去年の議会選挙の投票率は47.8%であった。
これはプーチンにとり危険である。決定的な委任の不足は国民への支配力を弱体化させ、支配層の中での立場を掘りくずしかねない。サプチャクの立候補は競争の見せかけを作り、興味を引き起こし、投票率を高めるかもしれない。
再選されたプーチンはその後、不運なメドヴェージェフ首相を解任し、新顔の政府を任命しそうである。その2-3年後、プーチンは自分が指名した新大統領に政権を渡し、自分は鄧小平のような国家指導者になるシナリオもある。2-3年前にはそうできたかもしれない。しかし若者が不穏な今日、そういうことがうまくいく保証はない。
出典:Financial Times ‘The limits of Russia’s managed democracy’ (October 21, 2017)
https://www.ft.com/content/0bbd5e4c-b593-11e7-aa26-bb002965bce8