“Do I seem like a bathrobe kind of guy, really?” he demanded, not humorously, of almost every person with whom he spoke over the next forty-eight hours. “Seriously, can you see me in a bathrobe?”
「『本当に、わたしがバスローブを着るような男にみえますか?』。冗談ではなく、報道が出てから48時間の間に話した人ほとんどすべに大統領は尋ねた。『真剣に、バスローブを着ている私を想像できますか?』と」
トランプ大統領にとっては、バスローブを着るのはダサいことのようだ。情報が洩れていることよりも、イメージが崩れることを気にする様子はとても滑稽だ。主流メディアに対し敵対的な態度をとるのも、自分のことを正当に評価してくれないという思いが背景にある。さらに、不動産業で成功するためにメディアを利用してきたなかで培った独自のメディア観も一因のようだ。
There was no happenstance news, in Trump’s view. All news was manipulated and designed, planned and planted. All news was to some extent fake—he understood that very well, because he himself had faked it so many times in his career. This was why he had so naturally cottoned to the “fake news” label. “I’ve made stuff up forever, and they always print it,” he bragged.
「トランプの考えでは、偶然のニュースというものは存在しない。すべてのニュースは操作され、意図的なもので、事前に準備され仕組まれたものだ。すべてのニュースはある程度はフェイク(ウソ)であるということを、トランプ自身がよくわかっている。自分自身がこれまでニュースを数多く捏造してきたからだ。だからこそ、トランプは当然のように、『フェイクニュース』というレッテルをつけたがるのだ。『わたしはずっとニュースをでっちあげてきたし、メディアはいつもそれを取り上げる』と大統領は自慢する」
トランプにとってメディアは自分がのし上がるために利用してきた仲間であり、ジャーナリストたちはでっち上げにも付き合ってくれると思っているふしがある。アメリカの最高権力者になったのに、メディアがなぜ否定的な報道ばかりするのかトランプは不思議に思っているに違いない。
政権のなかで自分以外の人間にスポットライトが当たるとトランプは機嫌が悪くなる。本コラム「トランプの元側近・バノンの恐るべき正体」でもとりあげたThe Devil’s Bargainというノンフィクションが昨年、アメリカでベストセラーになったことも、トランプが最側近だったバノンを遠ざけるようになった一因になったと本書では指摘している。The Devil’s Bargainでは、バノンなしではトランプ大統領は誕生しなかったとしており、トランプは機嫌を悪くしたという。ただ、本を読まないトランプ大統領の耳に、誰が本の内容を吹き込んだのかは分からないが。
さて、最後に本書のタイトル「FIRE AND FURY」(直訳は「炎と怒り」)について少し解説して筆をおきたい。トランプ大統領は自分のことは棚に上げ、気に入らないことがあるとすぐに、誰かの不始末のせいにして怒り(Fury)を燃やしクビ(Fire)にする。トランプのこの行動原理と、さらに、トランプの有名なコメントからの引用にもなっている。昨年夏に北朝鮮を威嚇した時の次のコメントだ。
They will be met with the fire and the fury like the world has never seen.
「彼ら(北朝鮮のこと)は、世界がこれまで見たこともないような炎と怒りに直面するだろう」
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