■今回の一冊■
FIRE AND FURY
筆者 Michael Wolff
出版 Holt
アメリカ・トランプ政権の内幕を暴露したノンフィクションだ。内容に激怒したトランプ大統領サイドが出版の差し止めを求め、発売前から人気に火がついた。アメリカ本国だけではなく日本の新聞やテレビも、本書の反響について連日のように報道している。あれだけメディアが取り上げれば、ベストセラーにならない方がおかしい。ニューヨーク・タイムズ紙の週間ベストセラーリスト(単行本ノンフィクション部門)では、1月21日付で堂々の1位で初登場した。
一読しての率直な感想を先ず記そう。期待を裏切らない面白さだ。筆者のマイケル・ウォルフ氏はいわゆるフリーのジャーナリストで、誰にも遠慮することなく、トランプ大統領も含め政権に関わる人々の間抜けでおバカな実態を赤裸々に描く。しかも、トランプ大統領やその側近を、政府高官らが馬鹿呼ばわりするコメントが実名で数多く引用されている。大事な会議でのトランプ大統領のトンチンカンな発言なども数多く紹介している。面白過ぎて逆に背筋が寒くなる。世界に影響を与えるアメリカの外交政策が、こんな幼稚なドタバタ劇の末に決まっているのかと驚かされる。
トランプがマクドナルドを好きな理由
トランプ大統領のホワイトハウスのなかでの奇妙な日常生活ものぞけて興味深い。大統領の寝室にはもともとテレビが1台あったのに、トランプ大統領は2台を追加した。さらに、次のように潔癖症な面を持っているという。
He reprimanded the housekeeping staff for picking up his shirt from the floor: “If my shirt is on the floor, it’s because I want it on the floor.” Then he imposed a set of new rules: nobody touch anything, especially not his toothbrush. (He had a longtime fear of being poisoned, one reason why he liked to eat at McDonald’s—nobody knew he was coming and the food was safely premade.) Also, he would let housekeeping know when he wanted his sheets done, and he would strip his own bed.
「トランプ大統領は、床に置いていたシャツを拾い上げた清掃係を叱責したことがある。『わたしのシャツが床の上に放ってあったら、それはわたしがそうしたいから床にあるのだ』と。そこで、大統領は新しいルールをいくつかつくった。何も触るな、特に歯ブラシには触るな、といったルールだ。(大統領は長年、毒を盛られるのではないかという不安を抱き続けている。マクドナルドで食べるのが好きな理由のひとつは、マクドナルドの店であれば事前にだれが来るか予測できないし、食べ物が前もって安全につくられているからだ。)また、ベッドのシーツも大統領から清掃係に指示があったら取り替えるようにし、大統領は自分のベッドのシーツは自分で取り外すようにした」
おまけに、トランプ大統領は毎晩、会食の予定が入っていないと6時半には寝室に閉じこもる。ベッドに入ってチーズバーガーを食べ、三つのテレビ画面をみながら、ごく限られた知人に電話をかけ不満をぶちまけるなどしているという。こうした電話を通じて政権内での不協和音がメディアに漏れていく。