2022年8月15日(月)

ベストセラーで読むアメリカ

2018年1月15日

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 駐留が長引いているアフガニスタンでの軍事戦略をどうすべきか議論する国家安全保障チームとの打ち合わせで、軍の専門家たちを前にトランプ大統領が2時間にわたり説教をしたという逸話も面白い。トランプ大統領は当初、アフガニスタンからの撤退を望んでおり、国家安全保障の顧問たちが増派を提案したことに激怒したというのだ。打ち合わせの場では、とるにたらない提案をしてきた軍の司令官たちをクビにするとまで息巻いた。本書では大統領の発言を次のように紹介している。

 This is just like the 21 Club, he said, suddenly confusing everyone with this reference to a New York restaurant, one of his favorites. In the 1980s, 21 closed for a year and hired a large number of consultants to analyze how to make the restaurant more profitable. In the end, their advice was: Get a bigger kitchen. Exactly what any waiter would have said, Trump shouted.

 「これはまさに21クラブのようだと大統領は言った。大統領が、自分のお気に入りのニューヨークのレストランの一つである21クラブの名前を突然出したので、みんなは何のことか分からなかった。1980年代に、21クラブは1年間店を閉めて沢山のコンサルタントを雇い、利益率を高めるにはどうすればいいかを分析した。結局出てきたアドバイスは、調理場をもっと大きくするというものだった。まさに、ウエイターならだれでも思いつく提案だとトランプは叫んだ」

いがみあう側近たち、混乱する政権運営

 本書が描くトランプ政権初期のホワイトハウスの中での権力闘争の構図はあきれるほど単純だ。そもそも最高権力者であるトランプ大統領その人がアメリカ国家を率いる能力や資質に欠ける。集まった側近たちもワシントン政界での経験が不十分で何をしていいか分からず、大統領の機嫌を損ねないように右往左往する。しかも、側近たちの中にも派閥があり互いにライバルを政権から追い出すために、新聞やテレビにライバル陣営に不利な情報を競ってリークするありさまだ。

 なかでも、トランプ大統領の参謀で主席戦略官だったスティーブ・バノンを中心とする右翼寄りの派閥と、トランプの長女で補佐官のイバンカ、その夫で上級顧問のクシュナーを中心とするリベラルな一派が互いにいがみあい政権運営が混乱するありさまはあきれるばかりだ。この対立する2つの陣営は自分たちの信じる政策を実現するために、大統領に取り入り場当たり的な政策を打ち出していく。しかも、トランプ大統領は説明資料のたぐいを一切読まず、人の話も聞かないとくる。

 トランプ大統領が就任して間もない昨年1月下旬、イスラム教徒をアメリカから締め出すことを狙った大統領令に署名した顛末も恐ろしい。本書によれば、参謀のバノンが自分の信念を貫き力を誇示するため、政権内部のスタッフや弁護士、行政当局の担当者らにも相談せず勝手に入国禁止の大統領令を準備し、なにも分からないトランプ大統領をけしかけて署名させたという。しかも、大統領令の発令の仕方など具体的な手続きが分からなかったバノンは部下に命じて、インターネットで大統領令の出し方を調べさせ準備を進めたという。

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