2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年3月19日

 米外交問題評議会のステイルが、トランプ大統領の「米国第一」主義をたしなめ、戦後米国が築いた世界体制を大事にすべきであると、2月9日付のForeign Affairs誌で述べています。主要論点は、以下の通りです。

(iStock.com/Oleksandr Kushniruk/Fosin2/Fredex8)

 冷戦初期、トルーマン大統領は、「戦後、大国は団結するどころか完全に分裂し、ソ連は全力であらゆることを阻害しようとしている。この中で米国が指導力を失うと、米国の利益は大きく害されるだろう」との趣旨を述べている。

 昨年12月にトランプ大統領が発表した国家安全保障戦略は、大国同士の対立が再び戻って来たと主張している。しかし、トルーマンとトランプの戦略は対極にある。

 トルーマンは、欧州とアジアに強い民主主義の同盟国を作ることで、米国の経済・安保上の利益を守ろうとした。トランプ政権では、「米国第一」主義の実行次第では、戦後の世界秩序が崩壊し、混乱が生じかねない。大国間の競争が始まっている時に、トランプは、戦後米国の外交を助けてきた同盟体制や自由主義を放棄しかねないのである。

 戦後米国は、国連、IMF、世銀、NATO、GATT、欧州統合を主導することによって、米国の安全と繁栄を確保してきた。ところがトランプは、これらの仕組みは米国の主権を脅かし、米国に不利な結果をもたらすものとして、二国間の話し合いで貿易赤字を縮小しようとしている。

 一方、トルーマンら戦後の世界秩序構築を主導した米国の指導者達はより現実主義だった。例えば、マーシャル・プランは、欧州の復興を助け、欧州を自立・自衛させることで、300万人の米兵の欧州からの撤退を可能とした。

 幸い、この考え方は、マティス国防長官に継承されている。彼は国務省予算の削減に反対し、「国務省の予算を削るなら、私はさらに多くの弾薬を購入せざるを得なくなる」と言っている。

 トランプ大統領の発表した国家安全保障戦略を見ると、マーシャル・プランやNATO等、戦後の世界秩序を称揚する部分はあるが、別の所では「米国が構築した仕組みを悪用する諸国」を非難している。

 同盟国は、米国の従属国ではない。今米国が決めなければならないのは、同盟国への妥協というコストを払ってでも、戦後の秩序を維持するか、それともご都合主義的にパートナーを見つけていくのかである。米国の戦後の世界秩序構築の際の哲学をよく理解する必要がある。

出典:Benn Steil ‘How to Win a Great-Power Competition’(Foreign Affairs, February 9, 2018)
https://www.foreignaffairs.com/articles/2018-02-09/how-win-great-power-competition


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