2024年4月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年3月26日

 モンテネグロは、旧ユーゴスラビア構成国の一つで、1992年の旧ユーゴ崩壊後、セルビアとともに2003年まで「新ユーゴ」を、2006年までセルビア・モンテネグロを構成していたが、2006年に独立した。

 昨年6月には、上記マティス発言にもある通り、モンテネグロはNATOへの加盟を果たした。このNATO加盟に対しては、ロシアの強い反対があった。昨年4月にモンテネグロのNATO加盟を承認する文書にトランプ大統領が署名した際には、ロシア外務省は抗議するとともに、「欧州に新たな分断線を引いて対立させるものである」と非難した。上記マティス発言は、儀礼的な性格の濃いものではあるが、ロシアの脅威を正しくとらえ、モンテネグロをロシアと対峙するための最前線と位置づけている。米国のロシアに対する厳しい姿勢の表れと言ってよいであろう。

 モンテネグロは、EUへの加盟という面でも注目される。欧州委員会は2月6日、バルカン6か国(セルビア、モンテネグロ、アルバニア、マケドニア、コソボ、ボスニア・ヘルツェゴビナ)のEU加盟への展望を示す文書‘EU-Western Balkans Strategy: a credible enlargement perspective’を発表、セルビア、モンテネグロが早ければ2025年にEUに加盟することなどを「指標」として掲げた。モンテネグロは、セルビアと並んで、既に加盟交渉の段階にある。もちろん、バルカン6か国のEU加盟実現には極めて大きな困難が待ち受けている。バルカン6か国は、法の支配が脆弱であり、政治腐敗が深刻で、組織犯罪が蔓延している。EU側はこうしたことの改善を加盟条件としているが、なかなか難しい。また、旧ユーゴ崩壊に伴う国家間、民族間の対立の解消も求められるが、これも困難な課題である。他方、バルカン6か国側でも、世論がEUの加盟にあまり熱心ではないようである。

 しかし、バルカンを脆弱な力の真空として放置しておけば、ロシアに真空を埋める良い機会を与えることになってしまう。軍事同盟としてはNATO、政治的統合としてはEUに出来るだけ取り込むことが望まれる。モンテネグロのNATO加盟は、バルカン6か国の中ではアルバニアに続くものである。同国が、防衛費をGDP比2%にするとのNATO加盟国の約束を果たす計画を示し、アフガンでの任務のための兵士を増やすなど、NATOに積極的に貢献していることは、有意義なことである。

  
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