2024年4月20日(土)

Wedge REPORT

2011年4月1日

 担任の先生の役割については、「英語を教えるという立場ではなく、『英語学習者』の模範として、積極的に英語を知ろうとする姿勢を示すべき」という「学習者モデル論」を唱えていますが、教室に学習者しかいない状況では、誰が間違いを正すのか、誰が英語に関して授業をコントロールするのか、という疑問は拭えません。これに対して、「ALTがその役割を担う」という返答をよくもらうのですが、ある小学校の先生は、「それを英語でALTに説明できたら担任は苦労しない」と漏らしていました。英語でALTに担任との役割の違いを伝えるという難しさはもちろん、そもそも打ち合わせの時間がとれないという問題も改善されない中で、無理な注文と言えるでしょう。

「英語を知っている」と「英語について知っている」

――ALTの質についても問題がある場合が多いのではないでしょうか。

大津教授:子どもたちから「ALTの言っていることが分からない」という声がたくさん寄せられています。本当に英語を「教えられる」人であれば、子どもたちの理解の様子を見ながら色々な工夫をして話すはずです。「英語を知っている」ことと「英語について知っている」ことは別物なのです。前者は「英語が使える」こと、後者は「英語を教えられる」ことに欠かすことができません。「英語について知っている」状態になるには、そのための訓練を受けなければなりません。

 立場を変えて考えてみてください。日本語を母語とする人が、次の二つの文を比べたとき、違和感があるのはどちらでしょう。
①昔々あるところにおじいさんとおばあさんいました。
②昔々あるところにおじいさんとおばあさんいました。
日本語のネイティブであれば、直感的に②の「は」がおかしいと感じ、正しく「が」に直すこともできるはずです。ただし、その理由を説明することは困難でしょう。それは、多くの日本人が「日本語を知っている」けれども「日本語について知っている」わけではないからです。

 現在のALTに対する研修で、上記のような状態が英語について活動中に出てきたときにきちんと説明できるようになるとは思えません。また、外国語指導においては、直すべき間違いと直さなくても問題にならない間違いを見極めることも非常に重要ですが、現状の授業を見ていてもそれができるALTはさほどいないと思います。

――子どもたちや親御さんの反応に変化は感じられますか?

大津教授:子どもたちの生々しい声としては、先ほどの「ALTの言っていることが分からない」の他に「しょうもないゲーム、同じ歌ばかり」というものが多い。最初は外国語に触れるだけで新鮮かもしれませんが、同じことの繰り返しでは飽きて当然です。

 親御さんは、当初の熱狂的な支持は徐々に下がりつつあるようですが、基本的に「公立で平等に英語教育が受けられる」という点についてはありがたがっている様子です。しかし、同時に、担任の先生が主導するという現実を知り、「本当に大丈夫なのでしょうか」という声も増えてきました。

必修化に向けた心構え

――子ども、親、担任の先生それぞれの、必修化に際しての心構えを教えてください。


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