進化する「食」

2018年5月19日

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頭の疲れを軽減するブレインフード

 国際会議に参加する人のニーズは多様です。ベジタリアン、グルテンフリー、アレルギー、糖尿病、ハラール、コーシェルなどに対応するのはもちろん、食材のサステナビリティ、地方色にも気を使う必要があります。国際会議に参加するゲストたちは、自分の要望を満たしてもらうことは当然の権利だと思っていますし、主催者側は事前にアレルギーや食事に関するアンケートを取ったりしていますから、それが準備されていないということはあり得ないことです。

 食のタブーが少ない日本では、宗教や文化的な視点から食の多様性に触れる機会が少ないため、外国人の食のニーズを理解するのは難しいかもしれません。しかし、グローバル化が進むなか、食の多様性への理解はビジネスシーンにおいても重要な役割を果たすことはいうまでもありません。そうした状況のなかで、私が会議にぜひ取り入れるとよいと思うのがブレインフード(brain food)です。

 ブレインフードとは一言でいえば脳によい食べ物ということになりますが、今のところ明確な定義はないようです。国内でも認知症をはじめとする精神疾患に対する研究が進められており、大豆や野菜、魚などを組み合わせた伝統的な和食に乳製品を加えた食生活が認知症の予防に役立つことが期待されています。このほか、赤ワイン(レスベラトロール)やお茶(カテキン)、カレーのスパイス・ウコン(クルクミン)などに含まれるポリフェノール、ココナッツオイルなどに含まれる中鎖脂肪酸にも認知症の予防効果が報告されています。

 しかし、私が注目しているのは、会議におけるパフォーマンスを発揮するためのブレインフードです。実はこの取り組み、世界的ホテルチェーンのRadisson BLU(ラディソン・ブルー)が、すでに会議用の食事として提供していることをご存知でしょうか?

 その内容は、以下のようなものです。

《ラディソン・ブルーが提案するブレインフードの6つの考え方》

①魚と全粒穀物、果物と野菜をたっぷりとる
②食材は主に新鮮な地元のものを使用する
③純粋な素材を使用し、加工食品の使用を極力抑える
④天然の甘味料を使用し、砂糖を10%以上加えない
⑤肉を少なめにし、かつ脂肪の量を10%以内に抑える
⑥味と満足感を重視する

 ホテルのウェブサイトによると、ラディソングループの複数の国の栄養士とシェフがワークショップを重ね、最新の脳機能と食事に関する研究をもとに「学習機能の向上」や「集中力維持」「ストレス軽減」など、会議の質を高めるために有効とされる食品や食べ方をまとめたものがベースとなっています。残念ながら、それぞれのエビデンスについては示されていませんが、その考え方の多くは高齢化と脳の健康に関する最先端の研究を行っているBaycrest Health Sciences(トロント)の研究者等が考案した「脳の健康のための食事ガイド」1)に示された内容と一致しています。

 「脳の健康のための食事ガイド」は、50歳以上の成人が野菜や果物、全粒穀物、魚、豆・豆製品、ナッツ類、低脂肪牛乳・乳製品を中心とした食生活を続けると、「読み書きのテストのスピードが速くなる」「物忘れが減る」といった学習機能や脳機能の改善結果に基づいており、ラディソン・ブルーのブレインフードも、このような研究結果がベースになっているのではないかと思われます。

 また、ラディソン・ブルーでは、食後に血糖値が急上昇(食後高血糖)し、その後急降下することによって感じる「眠気」を防ぐために、砂糖の使用を最小限に控え、血糖値の上昇を緩やかにする食物繊維の豊富な野菜や果物、精製されていない穀物(パン、ご飯、パスタ)などを積極的に取り入れることを推奨しています。

 効果については個人差があると思いますが、缶詰状態で脳を酷使する会議において、脳の働きを活性化させるブレインフードの提供は非常に理にかなっていますし、何よりもその遊び心が、会議の緊張感や参加者の疲れを和らげ、パフォーマンスの発揮に役立つのではないかと思います。日本でも、会議や社内食堂などでブレインフードの考え方が取り入れられる日は、そう遠くないのではないでしょうか。

(編集・鮎川京子)

資料1) https://www.cogniciti.com/images/BHFG_optimized.pdf

  
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