92歳と高齢のマハティールの後継者問題は、マレーシア政治が安定化するか否かを決定づける重要なファクターであろう。マハティールは、今後1~2年は首相を務めるとしている。その後は、かつて自らの政権の副首相を務め、その後は対立を深めて1998年に失脚させた、アンワルに禅譲するという約束であると言う。アンワルは同性愛の罪で懲役刑に服していたが、5月16日、国王の恩赦により釈放された。なお、アンワルの妻は副首相を務めている。マハティールとアンワルは、選挙戦ではかつての恩讐を越えて協力できたが、今後も折り合いをつけてやっていけるのか見通しは立たない。
新政権の外交政策も注目に値する。ナジブは、中国の融資を得て港湾や鉄道などのインフラ整備を進めようとするなど、対中傾斜を強めていたが、マハティールは中国に対して強い発言をしている。「中国は大金を持って現れ、それを貸し付けると言うが、どのようにそれを返済するか考えるべきである。プロジェクトに誘惑されて返済の存在を見失う国があるが、気づいたら国の大部分を失うことになる」と、適切な指摘をしている。マハティールがそうした姿勢で成功を収めてくれれば、東南アジアに強い味方ができることになるし、中国の札束外交の標的となり得る途上国にとっても良い手本となろう。
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