2024年11月22日(金)

World Energy Watch

2018年7月14日

EUの再エネ目標上方修正に抵抗するドイツ

 欧州委員会(EC)は、2030年に1990年比温室効果ガスを40%削減する目標を設定しているが、同時に最終エネルギー消費における再エネの比率を27%にする目標も設定していた。この再エネ目標の引き上げについて加盟国間で議論が行われた。

 6月11日欧州28カ国のエネルギー大臣がルクセンブルクで開催されたエネルギー会議出席のため集まった。目標引き上げに関し、イタリア、スペイン、デンマークなどの大臣は35%への引き上げを支持し、同じく35%を支持したフランスは譲歩しても33%との姿勢をみせた。

 会議での意見交換の際に、アルトマイヤー経済・エネルギー大臣は、「ドイツは責任を伴う達成可能な目標を支持する。33%から35%は達成不可能な数字であり、やり遂げることはできない」と述べ、「ドイツは今15%の再エネ比率を達成したが、そのための納税者負担は年間250億ユーロ(3兆2000億円)に達している。30%の目標は15%を10年で2倍にすること意味している」と高い目標設定に強く反対した。欧州主要国の再エネ比率は図-3の通りであり、ドイツはEU平均を若干下回っている。

 結局、欧州諸国は、2030年の再エネ比率を32%とし、遅くとも2023年までに引き上げのため見直しを行うことで合意した。32%とされた理由はドイツがそれ以上の数字に同意しなかったためと報じられている。再エネ比率引き上げ、温暖化対策よりも経済を優先するとのドイツの明確な意思表示だった。さらに、ドイツが抵抗しているのは、自動車の燃費規制値の将来目標値が厳しくなることだ。

温暖化対策より重要なのは自動車産業

 温暖化対策に欠かせないのは、運輸部門、特に自動車からの二酸化炭素の削減だ。全世界の自動車からの二酸化炭素排出量のシェアは18%になる。今後、途上国での自動車導入台数が増加するため、各国とも自動車部門の排出量削減に頭を捻っている。その回答の一つは、電気自動車、燃料電池車の導入だが、中長期的な課題だ。

 短期的には、内燃機関の効率を上げ燃費を改善することにより達成するしかない。米国をはじめ多くの国が目標値を掲げている。欧州も2009年から乗用車とバンの二酸化炭素の排出量を規制している。乗用車の目標値は、2015年1キロメートル当たり130グラム、2021年95グラムと設定されている。基準値は車両の重量により異なり、1.372トンを基準に増減が図られる。未達の場合の罰則は、2015年基準で1グラム当たり5から95ユーロ、2021年基準では95ユーロになる。

 昨年、2021年以降の目標値設定に関しECにて議論が行われたが、議論の最中に当時のドイツ・ガブリエル副首相兼外務大臣がユンケルEC委員長宛に出した11月3日付け書簡がマスメディアに漏れ話題になった。ガブリエル大臣は「自動車産業はドイツのみならず世界の成長と雇用にとり鍵となる部門である」とし「従って、自動車産業の革新力を厳しすぎる規制値により削がないことは非常に重要に思える。2025年に法的な目標値を設定するよりも2030年の規制値を2025年に見直すべきだろう。電気自動車の導入目標値を設定することと2025年に(2021年比)20%以上の削減目標を導入することは危険と思う」。

 このガブリエル大臣の書簡に関し、当時のヘンドリクス環境大臣は「どのような資格で外務大臣が意見を述べるのか理解できない。連邦政府内で調整された考えではない。自動車からの二酸化炭素排出量削減については野心的目標が必要だ」と同じSPDの前党首を批判し、SPDは電気自動車の導入について目標値を設定すべきとの立場であると述べている。 


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