エネルギー政策で優先することは
ガブリエル大臣の書簡に続き、ドイツ政府からは環境副大臣、経済エネルギー大臣の書簡もECに送られていたことが、その後判明した。環境副大臣は、規制に責任を持つのは環境大臣とし、さらに電気自動車導入強制化を示唆しており、ガブリエル大臣の立場とは全く異なるものだった。経済エネルギー大臣は自動車業界の技術開発と投資を考慮し目標年2025年を26年に一年遅れとすることを要請していた。
ECへの働きかけを行っていたのは、ドイツ政府だけではない。フランス首相は2030年40%削減目標が必要とし、ベルギー、オランダ、オーストリアなども同様の主張を行った。さらに、パリ、アムステルダム市長など欧州9カ国の首都の市長が40%削減を求める書簡をECに送ったことが明らかとなった。
11月8日ECは、2030年の規制値を2021年比30%減、2025年15%減、電気自動車導入に関しては強制化しないことを決定した。欧州自動車工業会からは、30%は達成が困難なので20%にすべきとの意見表明があり、環境NGOからは電気自動車導入に関する数値目標が見送られたことに関し不満が表明された。EC提案は、これから欧州議会と加盟国の承認を得ることになる。
3月に政権交代があったドイツでは、新内閣でも閣僚間の意見の相違が明らかとなっている。経済・エネルギー大臣と運輸大臣は厳しい規制に反対の立場、環境大臣と財務大臣は賛成の立場だ。
ドイツ政府の動きが明らかにしたことは、エネルギー・環境政策の優先事項は固定されたものではなく、経済情勢、産業政策などにより柔軟に考えられるということだ。「再エネ先進国ドイツ」は環境第一と思いこみ、「見習え」と主張していると、日本だけが、いつの間にか世界経済のなかで置いて行かれるかもしれない。
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