2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2011年5月31日

 泉澤社長も私も、漁協の既得権を排除するためにはやはり知事レベルでの漁業権の付与をもっと可能にするべきだと考えています。さらには、空漁場などもきちんと行政が把握して、やる気のある人たちにそれらの情報公開を積極的にするなど、漁協任せではなく行政がもっと漁業に関わり、管理する必要があります。しかし、「上」からの改革が難しいならば、網代漁業のような会社を応援することで「下」から変えていくことも一つの方法でしょう。網代漁業は、「ネクトン有限責任事業組合」という連合を形成し、全国漁業就業者確保育成センターが主催する漁業のビジネスプランコンテストで、生産者が魚の価格設定に携われるプランを提案し、見事助成金を獲得しました。やる気のある民間会社を支援するためには、漁業戸別所得補償などではなく、このような形の補助金を国も検討すべきです。

 漁協や漁業権の閉鎖性のために、漁業人口の減少は急激に進んでいます。復旧ができても、今のままではダメなのは明らかです。今回の震災は未曾有の被害をもたらしましたが、これを好機と捉えることが大切です。新しい水産の法制度や仕組みが必要なのです。漁業者や漁協の中でも、泉澤さんたちのように「このままではいけない」と、立ち上がる人たちもいます。ですから、私はこのような人たちをサポートして、漁業権の開放によって、真に漁業者のため、地域のための水産業とするように尽力していきたいと思います。
  小松正之(こまつ・まさゆき):東北大学卒、エール大学経営学大学院修了(MBA取得)、東京大学農学博士号取 得。 在イタリア大使館一等書記官を経て、水産庁漁業交渉官として捕鯨を担当。2000年から資源管理部参事官、2002年8月1日から2005年まで漁場資源 課長。元国際捕鯨委員会(IWC)日本代表代理、元国連食糧農業機関(FAO)水産委員会議長、元インド洋マグロ漁業委員会日本代表。2005年4月から 水産総合研究センターに理事(開発調査担当)として出向。2007年12月3日水産庁増殖推進部付。辞職。現在、政策研究大学院大学教授。著書に、『日本の食卓から魚が消える日』(日本経済新聞出版社)、『これから食えなくなる魚』(幻冬舎)など多数。2005年ニューズウィーク日本版「世界が尊敬する日本人100人」に選ばれる。2010年行政刷新会議農林水産業地域振興WG委員(菅直人首相任命)

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