副大統領候補は政治生命を絶たれる
大統領ではなかったものの、その有力な候補が政治生命を絶たれたのが2004年、2008年の大統領選を戦ったジョン・エドワーズ上院議員(民主党)だ。乳がんで闘病中の妻がいるというのに、他の女性と関係を持っていたことを暴露された。
筆者は2004年の選挙を取材したが、エドワーズ氏は当時50歳、ケネディばりのハンサムなルックスと情熱的な語り口、予備選の幕開けとなった1月のアイオワ州党員集会で2位につけてから強力候補に躍り出た。予備選ではジョン・ケリー上院議員(後、オバマ政権の国務長官)に敗れはしたものの、ケリー候補のランニング・メート(副大統領候補)に指名された。
この年の大統領選本選で、ケリー・エドワーズのコンビは再選を目指す共和党のジョージ・ブッシュ氏(子)に敗れるが、エドワーズ氏は08年選挙の予備選を途中で離脱した際も、民主党政権が登場したら司法長官などの有力閣僚に就くとも噂された。いわば民主党のホープの一人だったが、病身の妻に嘘をついて不倫関係を続けたことで有権者の支持を一気に失った。妻はまもなく亡くなり、自らもこの事件にからんで刑事訴追を受けるなど代償は高くついた。
大統領候補ではないが、アフリカ系で2人目の連邦最高裁判事に指名されたクラレンス・トーマス氏をめぐるセクハラ騒ぎも忘れられない。
1991年、先代ブッシュ大統領から指名されたトーマス氏は、問題なく上院で承認されるとみられていた。しかし承認手続きに先立ってFBI(連邦捜査局)が身辺調査を行ったところ、オクラホマ大学のアフリカ系女性教授が、トーマス氏からセクハラを受けたと申し立てた。連邦機会均等委員会に勤務していた当時、部下だったこの教授をデートに誘い、断られるとわいせつな言葉を浴びせるなどしたという。
トーマス氏本人は強く否定したが、上院司法委員会は、申立人の教授を喚問して証言させる一方、氏を擁護するグループ、排斥するグループに証言させた。それぞれ、トーマス氏、女性教授をテレビカメラの前で、遠慮会釈なく誹謗し合うのをみて心底驚いた。〝惻隠の情〟を知る日本人には考えられないことだった。結局指名は僅差で承認されたが、外国人からみても後味の悪い話だった。