2024年4月27日(土)

ベストセラーで読むアメリカ

2018年9月13日

「トランプもノーベル賞を受けて当然だ」

 トランプが連発する不適切な発言につても、本書は次のように擁護する。

 Okay, I'll give you this: Sometimes the president isn't as politically correct as LIAR Obama. But isn't it refreshing to finally be able to listen to someone who says what he thinks? To hell with political correctness. A nation exhausted after eight years of Obama's “I say what I mean and mean what I say” doubletalk were starving for the straight talk Trump delivered. Sometimes his wording is a little rough around the edges. But Donald Trump feels the way much of America feels, and that's why he was elected our president.

 「たしかに、次の点は認めよう。トランプ大統領は時に、嘘つきオバマとは違って、政治的に不穏当な差別的な発言をする。しかし、そうした点はむしろ新鮮ではないだろうか、本音で語る人の話をついに聞けるようになったのだから。公平で中立的な偏見のない物言いなんてまっぴらだ。アメリカ国民はオバマの行儀のいい空疎な言葉に8年間も付き合い、うんざりしていたから、トランプが発する正直な言葉を待ち望んでいたのだ。トランプの言葉遣いは少し乱暴できつすぎるときもある。しかし、ドナルド・トランプはまさにアメリカ国民と同じように感じる。だからこそ、トランプはわれわれの大統領に選ばれたのだ」

 とまあ、本書は全編こんな調子で、トランプ大統領が素晴らしい理由を、これでもかと並べ立てる。北朝鮮問題でもトランプは大きな成果をあげており、何もしなかったオバマでもノーベル平和賞をもらえたのだから、トランプもノーベル賞を受けて当然だとも論陣をはる。いくら引用してもきりがないので、この辺でやめる。繰り返しになるが、こうした本書の主張に拍手喝采するアメリカ国民がたくさんいるという事実を軽視してはいけないだろう。

 最近も、著名ジャーナリストのボブ・ウッドワードが出版したトランプ政権の内幕を暴露するノンフィクションが話題だ。欧米だけでなく日本も含め主力メディアはウッドワードの著書について盛んに取り上げている。対照的にメディアは、本書のようなトランプ礼賛本が売れている事実を報じない。インテリたちが軽んじる本書のようなベストセラーの売れ行きにも目配りをしないと、アメリカの民意を読み誤るおそれがある。
 

  
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