自らも不動産業界に身を置く管理組合の永井聖理事長は、「管理会社は一般的に大規模改修で3割、日々の管理で2割5分のマージンを抜く。ここまで築年数が経つと次の大規模改修も見通せず、日々のメンテもさらに増える。味がなくなったこのマンションから逃げ出したいのだろう」と見る。
「管理費の値上げは飲めない」と断ると、案の定、管理会社は間髪入れずに管理契約の打ち切りを通告してきた。「単純な大規模修繕を繰り返す時期は終わったので、これからは修繕費をただ積み立てるだけでなく、いかに使って延命していくかが問われる」(永井氏)と未知の領域に足を踏み入れる。
延命措置と並行してマンションの建て替えの道筋を引くことも理事長の大事な役割である。しかし、理事長を悩ますのは法律の壁である。日照権の問題で、容積率は建設時の300%から200%へと減らされている上、風致地区にも指定されたため、建て替えの際にはセットバックも必要だ。この条件では、今の住居スペースより大幅に狭くなり、半分の住戸は家族では居住できない広さになり退去を余儀なくされる。このため住民の総意を得るのは難しい。
マンションの「終活」が二進(にっち)も三進(さっち)もいかないなか、「マンション寿命」のカウントダウンは刻一刻と進んでいく。
現在発売中のWedge10月号では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店にてお買い求めいただけます。
■マンション サバイバル時代
中西 享、榊 淳司、Wedge編集部
PART 1 「老朽化マンション」の不都合な真実
PART 2 マンションの本当の価値は管理組合が握る
PART 3 住民合意、資金、容積率… 厳しいマンション建て替え
PART 4 憧れのタワーマンション 購入後に待つ困難
作れば売れる大ヒット商品 なぜ、日本人はタワマンが好きなのか?
PART 5 「マンション自治」を進める法整備を
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