災害食のコンテスト、ポイントはおいしさ
多発する地震や災害により、災害食への関心を高める必要から、今では災害食のコンテストも行われるようになっている。
主催するのは防災安全協会で、2014年の「横浜・災害食グランプリ」を皮切りに、全国で「災害食グランプリ」が開催されるようになっている。
メーカーなどが出品したご飯類、パン・菓子類、惣菜・レトルト・ドライ類など5つのカテゴリーに分けられた災害食を、一般消費者が試食し、おいしいものを選ぶというイベントだ。おにぎり、おこわ、カレー、肉じゃがなど、これが災害食かと思うような食品が目白押しだ。
こちらがB(メーカー等)toC(消費者等)なら、B(メーカー等)toB(企業等)のコンテストもある。
「災害食大賞」は栄養、アレルギー、開発力に着目し、栄養学や危機管理の専門家らの投票で金・銀・銅賞が選ばれる。このコンテストは、栄養やアレルギーといった基本的な食生活のあり方に沿って災害食がつくられるようになっていることを示している。2018年の「災害食大賞」には31社60製品がエントリーしている。
災害時の健康維持に、不可欠な災害食
「非常食といえば乾パン」という世代には、おいしさや栄養を重視した食品は贅沢品のように映るかもしれない。実際、価格は通常のものより割高だ。しかし、防災安全協会の常任理事北村博氏は、「被災したら、自宅避難であろうと避難所避難であろうと長期戦を強いられる。栄養バランスの崩れが体調を崩す原因になる。非常時であっても、できるだけ普段の食事に近いものをとることで、健康の二次被害を防ぐことが大切だ」という。食べ慣れないものを食べなければならないストレスは、避難生活をますます辛いものにするだろう。だからこそ、災害食にもおいしさや栄養が求められるようになっているのだ。
こうした考え方は、一般家庭での備蓄の方法にも変化をもたらしている。それが「ローリングストック」だ。万一の場合にしか食べないことを前提にした非常食ではなく、買い置きした食品を普段の食事でも食べながら、順次買い足して備蓄するローリングストックのほうがメリットが大きいということで、この方法を活用している人は増えている。いざという時に食べ慣れていたものを口にできるうえ、保存期間を過ぎた食品を廃棄することもない。持続可能性の実現にも貢献できるというわけだ。
いうまでもなく、ローリングストックならば、1年程度の保存期間の食品を回していけば、手軽で割安に災害食の備蓄ができる。計画的な消費生活に自信のある人なら、おすすめの方法だ。北村氏も、日常食の延長に災害食があるという考え方のほうが準備しやすいだろうという。
とはいえ、災害食と買い置きの食品を組み合わせてローリングストックをしたほうが、より安心であることは間違いない。なにしろ、災害はいつ起こるかわからない。「たまたま、昨日食べてしまった」では意味がない。
もはや日本で、「想定外でした」は許されない状況だ。
「最低3日間、自分の命は自分で守ってください」という北村氏の言葉に、自宅に帰って埃まみれの防災袋を恐る恐る開けてみた。
そこには、紙パック入りの水が1本。とっくの昔に賞味期間は切れていたのだが、いったいどこで、この珍しい紙パック入りの水を入手したのやら。まったく思い出せずにいる。
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