Moukah国立公園、フリーマンキャンプ
11月7日。ナラビーンから北上。朝方の雨も上がり初夏の陽気の中、セントラルコーストを目指してフェリーボートで対岸に渡る。更に曲がりくねった坂道を登り丘陵地帯の尾根道を進む。午後3時頃Moukah国立公園のフリーマンキャンプ場に辿り着く。
季節外れなので管理人も不在。無料でキャンプできるようだ。広大な敷地には数百台のキャンピングカーが駐車できるが、他には数台の車が停まっているだけだ。鳥の鳴き声と風の音しか聞こえない。無限の青空を見上げているとロビンソンクルーソー気分だ。
途中の村の雑貨屋で仕入れたポテトチップとサラミソーセージをつまみながらシャルドネを一本空けた。夕陽が沈む頃にはシュラフで眠りに落ちていた。
無心にスケボーをする邦人学生
11月8日。ホークスベリー川を渡りゴスフォード(Gosford)を目指す。朝からにわか雨と向かい風と上り坂の連続で距離が稼げない。ゴスフォードの手前の海沿いの崖の上に瀟洒な家が並んでいる小さな町で野営することにした。
オーストラリアではちょっとした町には必ず公園がありテニスコート、バスケットコート、サッカー場などのスポーツ施設がある。この町の公園にはバスケットコートの隣にスケートボード練習場があった。
12~15歳くらいの少年が5人くらい練習していた。よく見ると180センチくらいの年上の褐色の肌をした精悍な面構えのアジア系の青年がいた。そして20歳くらいのアジア系の女の子が彼をじっと見つめていたことに気づいた。彼の彼女のようだ。
青年は少年達よりもスケボーが数段上手く、少年達から彼が一目置かれている様子が感じられた。話してみたら青年は意外なことに日本人であった。
ワーキングホリデー・ビザで一年間滞在して明日帰国するとのことであった。北陸出身の学生と名乗った。近くの農場でブルーベリーの収穫作業をしていたという。寡黙な彼が語ったのはそれだけであった。
それから30分ほど黙々とスケボーをして、彼女と一緒に帰っていった。中国系アジア人の彼女とオーストラリア最後の夜を過ごすのであろう。彼の後ろ姿がなぜか印象に残った。彼はオーストラリアの一年間で何を得たのであろうか。その一年は彼の人生にどのような影響をもたらすのだろうか。それは同時に私自身への問いかけでもあった。
⇒第5回に続く
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。