2024年11月22日(金)

オトナの教養 週末の一冊

2018年11月1日

 あと、男性でも痴漢被害に遭う人はいます。知り合いの男性からも「実は」という話は何度か聞いたことがありますが、男子高生の2.5%、男子大学生の6.4%が被害に遭っているという調査結果(※)もあります。6.4%ということは、約15人に1人。Facebookで男性の友達が50人いるなら、3人は被害経験がある確率です。男性に対して、「そんな格好をしていたから痴漢に遭うんだ」と言う人はいないでしょうね。

(※)青少年の性行動全国調査(2011年/日本性教育協会) 女子の痴漢の被害率は、高校生=24.1%、大学生=38.3%。

――痴漢は、触ることだけではないと先程のお話で出てきました。

小川:女性の体に服の上から触れるのは迷惑防止条例違反で、性器などを露出する行為は公然わいせつ罪、下着のなかに手を入れたり、自らの陰部を触らせる行為は強制わいせつ罪になります。スカートを切ったり、体液をかけたりする行為もあり、これは器物損壊です。私自身は、器物損壊以外は電車の中で被害経験があります。知人でスカートに精液をかけられた人も知っています。

――痴漢の被害にあった女性は、すぐに駅員へ相談したり、警察へ駆け込んだりするものなのでしょうか?

小川:警察へ相談に行くのは、警察庁の調査では10人に1人。ただ、私の感覚ではもっと少ないと感じます。何十回と被害にあっても一度も相談に行ったことがない人のほうが多いと思います。

――では、被害にあったときにはどうするんですか?

小川:声も出せないことが多いですよね。駅についたときに、降りたり車両を変えるとか。行動に移せる女性でも、睨んだり、蹴ったりする程度で、警察へ行くのはハードルが高いと思います。男性の被害者6人に話を聞いたときも、駅員に知らせた人が1人、警察に行った人はゼロでした。

――駅員に相談するのもハードルが高い?

小川:高校生の頃、友人が被害にあい、駅員に相談したそうです。ただ、駅員の態度が非常に冷たかった上、警察が到着するまで加害者と駅の事務室で二人きりで待たされたと言います。男性被害者の場合も、加害者の手をつかんで駅員のところに行ったけれど、けんかと間違えられ納得のいく対応は得られなかったと聞きました。もちろん、すべての駅員さんがそんな対応だとは思わないのですが、そういう対応を一度でも受けたら、「助けてくれるんだ」とは信じづらいですよね。

 被害者が被害を訴えることのハードルの高さは、あまり知られていないように思います。加害者の手をつかんだって、大人しく連行されてくれる人ばかりではないし、周囲が必ずしも助けてくれるわけではない。犯罪を行っている人を自分で捕まえなければいけないのって、普通に考えて大変ですよね。何度か痴漢を捕まえたことのある知人は、「目撃者がいないと警察も困った顔をするので、加害者と目撃者両方を捕まえようとして、大変な思いをした」と言っていました。


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