テレ東・プロデューサーが語る「テレビサバイバル」

2018年11月16日

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小林史憲 (こばやし・ふみのり)

テレビ東京・プロデューサー

1972年、東京都生まれ。98年、テレビ東京に入社。報道局で警視庁記者クラブ、「ガイアの夜明け」、「カンブリア宮殿」などの番組ディレクター、プロデューサー。北京支局特派員。現在はコンテンツ事業局・海外ビジネス部副部長。ドラマやアニメをプロデュースしながら、海外へのコンテンツ展開を進めている。著書に『テレビに映る中国の97%は嘘である』(講談社)、『騒乱、混乱、波乱、ありえない中国』(集英社)。

「テレ東伝説」が生まれる本当の理由

 さて、ここからが本題である。「テレ東伝説」を生み出す、「独自路線」で「ブレない」やり方は、テレ東の「戦略」なのかどうか?

 率直に言おう。

 「戦略ではない」。

 少なくともテレ東で20年間働いてきて、「うちの会社はこういう戦略だから『マッドマックス』を放送する」なんて話は聞いたことがない。上司から「うちの戦略はこうだから独自路線でいくぞ」なんて指示をされたこともない。

 答えはシンプルである。「人がいない。金がない。だから他局と同じことはできない」それだけだ。

 特に生中継は金がかかる。中継車を出して、技術スタッフを現場に派遣したりで人手もかかる。しかも、中継したところで、テレ東の予算やマンパワーでは他局よりショボくなる。

 わざわざレギュラー番組を中止にして、臨時のニュース番組を放送するのは、テレ東としてはかなり負担が大きいのである。

 例えば、東日本大震災の時はテレ東も発生直後から特別編成に切り替えている。33時間に渡り、ノーCMの緊急報道特番を流し続けた。通常放送に戻したのは、発生の翌日(3月12日)23時55分。深夜アニメ『テガミバチ REVERSE』からだった。(他局は3月14日〜15日にかけて順次通常放送に戻した)

 他局に先駆けて通常放送に戻す決断をした理由について、テレビ東京の島田昌幸社長(当時)は同月31日に行われた定例会見でこう述べている。

「現場の緊張感が相当高かったため、取材の長期化に備えて少し余裕を持たせたかったこと。そして、子供たちが楽しみにしているアニメ番組を放送する意味があると考えたことです」

 つまり、理由は2つあるということだ。他局に比べて人も金も少ない中、緊急特番を続けるのは難しいという現実的な判断。もう1つは、各局が同じように悲惨な映像を流し続けている中、視聴者に別の選択肢を与えることにも価値があるという判断である。

 ちなみに、現場的な厳しさで言えば、テレ東はキー局として圧倒的に系列局が少ないという事情もある。日本テレビ系列が30局、TBS系列が28局、フジテレビ系列が28局、テレビ朝日系列が26局に対し、テレビ東京系列は6局しかない。東北地方には1局もない。取材体制的には圧倒的に不利だ。

 また、ノーCMというのも企業体力的には非常に厳しい。広告収入で成り立っている民放としては、ノーCMは収入がないまま放送を続けるということだ。受信料で経営しているNHKとは決定的に違う部分である。

 民放は報道機関でもあるが、民間企業でもある。ニュースをいち早く視聴者に伝えなければいけないという使命感を抱きながら、状況に応じて身の丈にあったやり方を選択せざるをえない。

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