2022年12月4日(日)

オトナの教養 週末の一冊

2018年11月22日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

――ここまでのお話を聞いていると、フランス独特の性愛に対する考え方があるのがよくわかりました。そうなると、子どもに対する性教育というのも独特なのでしょうか?

プラド夏樹:私は1963年生まれで日本で大学まで行きましたが、セクシャリティに関することは「いけないこと」という雰囲気がまだ濃厚でした。家庭でも学校でも、セクシャリティについておとなに相談できるような雰囲気はありませんでした。

 そして、フランスに来て、出産し、子育てが始まりました。まだ、子どもが小学校の頃でしたが、数人の友達が家に来て遊んでいた時のことです。私は他のことをしながら耳を澄ましていたのですが、そのうち、一人が「パパとママンの部屋から明け方、物音がしてくる」と言い出し、すると、他の子どもたちが、目をキラキラさせて、羨望の眼差しで「ええ!!!  本当?」と。そのうち、それぞれが「うちだってたくさんキスしてる!」「いや、うちの方がもっとラブラブだもん!」と自慢し始めてびっくりしました。私にとっては親のセックスなんて「ええ? あの色気ゼロの二人が?」と思うような想像しにくいものでしたが、こちらの子どもたちにとっては「幸せ」の象徴なんだなあと。

 また、息子が思春期に入ると、今度は、彼がセクシャリティに対してまったく罪悪感を感じていない、それどころかいかにも「これは僕の権利」というような言動をするので、「あれ?」と思いました。これは日本とは違うなと、少なくとも、私が中高生だった頃の「親にはコソコソ隠れて」とは違うなと。

 具体的には、本にも書きましたが、彼が家出をした時に、私にショートメッセージを送ってきて、「コンドームするから心配しないでね」と言ってきた事件があったり、その後は、ごく普通のことのように、彼女を家に泊まりに連れてくるようになりました。彼女と二人で部屋に籠っているので、心配してドアをノックしたら、「ママン、プライバシーは大切にしてね」とやんわり言われたり……。

 何しろ私は外国人なので、「これってこの国では普通?」と思いがちな自信のない母親でした。でも、そういうとき、多くの他のママ友たちが相談にのってくれて、彼女たちとの会話の中で、親たちが、子どものセクシャリティを大人になる過程の一つの重要なステップとして、暖かく見守っていることに気づきました。「決して悪いことではなくて、人生の中で大切なことだよ。でもルールはあるからね」というメッセージを、それぞれの親がなんらかの形で子どもに送っていることに。

 フランスには授業参観というシステムがないのですが、上記のようなことをきっかけに、私も、性教育に興味を持ち、子ども向けの性教育の図書を探したり、授業例のビデオを探してみました。学校では、生殖の仕組みや避妊、性病予防といったことだけではなくて、愛情表現としてのセクシャリティ、性的同意についても言及していることを知り、これは是非、日本の人々にもお伝えしたいなと思いました。私が若かった時の日本では、商品化された性は街に氾濫している一方、セクシャリティに関する大人からのポジティブなメッセージがないという状態で、性は「怖いもの」「恥ずかしいもの」というイメージに随分、苦しめられました。これからの子どもたちには、そんな思いをして欲しくないなと思います。

 こうした子育ての経験が、本書の執筆の直接的な動機となりました。

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