11月30日から12月1日、アルゼンチンのブエノスアイレスでG20サミットが開催された。この機会を利用して、トランプ大統領は中国の習近平総書記と夕食を共にしながら会談を行なった。会談に関して米国大統領府は、報道官による声明を発表した。その要点を紹介する。
・貿易に関して、トランプ大統領は、来年の1月からも2000億ドル相当の製品に対する関税は10%に据え置き25%には上げないことで合意した。中国はまだ規模に関しては合意していないが、米国から農産物、エネルギー、工業製品等を購入し、両国間の貿易不均衡を是正することで合意した。中国は、米国の農家からすぐに農産物を購入し始めることに合意した。
・両首脳は、技術移転の強要、知的財産の保護、非関税障壁、サイバー侵入及びサイバー窃取、サービスと農業に関する構造変革に関する交渉をすぐに始めることで合意した。両者は、90日以内にこの作業を完結するよう努力することで一致した。もし期限内に合意に達しないようなら、関税は10%から25%に上がる。
・北朝鮮問題に関しても、大きな進展があったことで意見の一致をみた。今後もトランプ大統領は習近平総書記とともに、金正恩委員長を交えて、核のない朝鮮半島の実現に努力する。トランプ大統領は、金委員長への友情と尊敬を示した。
参考:White House ‘Statement from the Press Secretary Regarding the President’s Working Dinner with China’ December 1, 2018
G20という多国間首脳会議の合間には、様々な二国間の首脳会談が開催される。日米、日中、日仏、米韓等の他、今回、初めて日米印の3か国首脳会談も行われた。その中でも、世界が特に注目するのは大国間の首脳会談である。ロシアがウクライナの艦船3隻を拿捕し兵士達を拘束したのを受け、米露首脳会談が中止となり、最も注目されるのは米中首脳会談となった。そして、その結果が、上記の報道官声明である。
とりあえず、米中の貿易戦争のエスカレーションは回避された。90日間、実務的協議を進めて、両者は歩み寄ろうとしている。もちろん易しい交渉にはならないだろう。「技術移転の強要、知的財産の保護、非関税障壁、サイバー侵入及びサイバー窃取、サービスと農業」という具体的リストは、中国にとって簡単に米国に譲歩できるものではない。10月から11月にかけて米国商務省や司法省が問題にした米国技術の窃取にしても、中国側はいずれも容疑を否認していると言う。知財にしても技術移転にしても、中国側にとっては、罪の意識はないかもしれない。「非関税障壁」に関しては、米中それぞれの認識が異なるかもしれない。何が「非関税障壁」かと定義するのは難しい。
90日間の猶予と言うが、その間、日本も米国との貿易交渉が始まる。米国は、様々な相手を天秤にかけながら、自国に有利な交渉結果を目指すだろう。日本も、国益を重視した粘り強い交渉ができると良いだろう。
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