2024年11月22日(金)

中東を読み解く

2018年12月7日

トルコが側近2人に逮捕状

 アシリ副長官とカハタニ王室顧問はカショギ氏殺害事件後に解任されたが、起訴はされていない。カハタニ氏は米国が制裁を課した17人には含まれているが、アシリ将軍は含まれていない。

 こうした中、トルコの裁判所は12月5日、事件に関与したとして、カハタニ元王室顧問とアシリ将軍に逮捕状を出した。しかし、サウジが2人をトルコ側に引き渡す可能性は皆無だ。トルコ側はカショギ氏の殺害時の状況や、容疑者の特定など情報を小出しにしながらサウジに圧力を掛けてきたが、情報も弾切れ状態で、撃ち尽くした感がある。

 またトルコは国際的調査の必要性を主張し、これにはフランスのマクロン大統領や国連の人権担当高等弁務官らが強く支持しているが、皇太子の後ろ盾であるトランプ大統領は皇太子の関与を裏付ける「確定的な証拠」がない、と幕引きの構えを変えていない。

 しかし、カショギ氏の遺体の所在など多くの謎が残されたままで、ムハンマド皇太子に対する容疑も深まる一方だ。最近新たに明るみに出たのは、殺害事件が起こった頃、皇太子とカハタニ氏が11回に及ぶ交信をしていたことを米中央情報局は(CIA)が傍受していたというもの。

 内容までは明らかになっていないが、米議会上院の秘密会でハスペルCIA長官から事情を聴取した共和党のコーカー上院外交委員長は「皇太子が仮に陪審員の前に立てば、30分で有罪の評決となるだろう」と言明。トランプ大統領とは反対に、CIAや米議会は皇太子が殺害を命じたとの感触を強めていることが鮮明になっている。

 当の皇太子は事件が終わったことを誇示するかのように、ブエノスアイレスで開かれたG20サミットに出席し、国際舞台への復帰を図った。予定されていたトランプ大統領との会談は実現せず、各国首脳からよそよそしい対応をされたものの、ロシアのプーチン大統領とは固い握手を交わした。ウクライナ艦船拿捕事件で孤立するプーチン氏とははぐれ者同士の握手に見えた。

  
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