12月2日にアルゼンチンで行われた米中首脳会談を、シンガポールの有力華字紙『聨合早報』(12月3日)は一面で「中米両国、新税徴収を暫時停止し、90日以内に新たなる協議を/ホワイトハウス、首脳会談は非常に成功」との見出しを掲げて伝えた。
同紙によれば、G20に参加したリー・シェンロン(李顕龍)首相は国民に向って、「中米間の矛盾は米ソ冷戦時代のそれと同日には論じられない。当時のソ連は軍事超大国だったが経済力は極めて小さく、各国は基本的にソ連との経済交流はなかった。だが中米関係のみならず、両国と各国との経済関係は世界経済と切り離せない。中米関係は長期に亘る緊張と困難な時期を迎えるだろう。経済的にも不安定な時代を覚悟し、どのような状況にも立ち向かえる準備をしておくべきだ」――こう呼び掛けている。
米中首脳会談当日の午後、アルゼンチンを遠く離れたシンガポールではシンガポール国立大学東亜研究所の鄭永年所長による「中米貿易戦争とその将来」と題する講演が行われていた。演題からして米中首脳会談に合わせて準備していたことは間違いなく、それだけシンガポールでも高い関心が払われているということだろう。
『聨合早報』の報道、リー首相の国民向け発言、鄭永年所長など専門家の見解――東南アジアの“小さな経済大国”における見方は、当然のように日本とは違う。だが、その違いこそが、米中両国の狭間における立ち位置に悩む我が国にとっては少なからざる参考になるはずだ。(なお我が国とは異なり「中米」と表記しているところがシンガポールにおける華字紙の立場を象徴していると思われるので、敢えて「中米」のままにしておく)