分断の時代、米中を選択する時代の到来
外交面にも影響が及ぶ。バラマキ外交で取り込まれてきた途上国や、経済的利益で付き合ってきた先進国も「金の切れ目が縁の切れ目」で散っていけば、中国の孤立化に拍車がかかる。
すでに中国の融資や援助を受けてきた国々も離反の姿勢を見せている。今年5月、マレーシアで政権交代が実現し、マハティール氏が92歳の高齢で首相への返り咲きを果たすや、高速鉄道などインフラ建設案件の中止を決断し、借金漬けにさせられた中国投資の追い出しに取り掛かった。
インド洋の島国モルディブでは11月17日、野党の統一候補として出馬し、大統領選で勝利したソリ氏の就任式が行われた。ソリ氏は親中派ヤミーン前大統領の外交政策を厳しく批判し、対中関係の見直しやインドとの関係強化政策を明確に打ち出した。
「脱中国」という言葉が使われて久しい。その裏には、中国への過度依存という背景があった。いよいよ本格的な分断と棲み分けの時代がやってくる。サプライチェーンに関していえば、「中国外サプライチェーン」は今後数年かけて着々と造り上げられるだろう。
日本も含めて米中以外のアジア諸国にはまさに、難しい選択を迫られる時がやってきた。それはもはやサプライチェーンの次元を超えて、基本的立場や政策というレベルで考えなければならなくなる。
シンガポールのリー・シェンロン首相は11月14日、同国で開催されたASEAN首脳会議後の会見で、「もし2つの敵対国と同時に友好関係をもつなら、両方とうまくやれる場合もあれば、逆に気まずくなる場合もある」と語り、米中を選択する時代の到来を示唆した。
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。