政権発足以来「地球温暖化はウソ」などと語り、オバマ政権で打ち立てられた環境政策を次々に覆すトランプ大統領。これに真っ向から対立しているのが以前から連邦政府より進んだ環境対策を実施しているカリフォルニア州だ。今年には欧州の数カ国に習い、「2040年以降州内でのガソリン車両の販売を禁止する」という法案まで提出された。この法案は議会で否決されたものの、実現を狙う環境派議員は修正案を提出する準備を進めている。
こうした状況の中で次にカリフォルニア州が打ち出したのは「2029年から州内の公共バスをすべてゼロ・エミッション(EVや燃料電池など、排気ガスを出さないシステム)車両にする」という方針だ。こちらはすでに同州の大気資源管理局での投票により賛成多数で可決されている。詳しく言うとまず2023年から、州内で新規に公共交通用バスを購入する場合、4分の1以上がEVなどのゼロ・エミッションであることが要求される。そこから徐々に既存のバスを置き換え、29年にすべてのバスをゼロ・エミッションにする、というのが骨子だ。
カリフォルニア州は以前からEVバスの導入に熱心で、2013年にはロサンゼルス郊外のランカスター市が中国BYDと提携し、同市にBYDのEVバス製造工場を誘致した。BYDはロングビーチ市を始め、カリフォルニア州内や全米の数都市にEVバスを販売しており、着々と実績を積み上げている。
またここ数年で州内にEVバスに特化したスタートアップ企業も増えた。代表的なものはシリコンバレーのプロテラ社だが、APSシステムズ、アストンバス、コンプリート・コーチ・ワークス、Eバス、スペシャルティ・ビークル・マニュファクチャリングなど、ミニバスからフルサイズバスまで、様々なEVバスを製造する企業が生まれている。
同州によるとすでに50の自治体が実際にEVバスを導入している、というが、その総数は今年12月時点で132台。州内のすべての公共交通バスを合わせるとおよそ1万4000台になるというから、道のりは長い。もちろん州政府からEVバス導入に際しての補助金が出るのだが、サンフランシスコ、ロサンゼルスなどの大都市では実現の可能性が高い一方、予算不足にあえぐ小さな自治体にとっては負担になりかねない。
カリフォルニア州ではEVバス購入への補助金を州のガソリン税、また企業などに課している環境税(企業が排出出来る地球温暖化効果ガスの総量を設置し、これをオーバーした場合には罰金、下回った場合には税制優遇措置が受けられる)を財源とする、としている。しかし同州のガソリン税率は全米でも最高レベルで、ここから高速道路の補修費なども支出されるため、さらなるガソリン税の増加につながるのではないか、という懸念も消費者団体からは出ている。