CESでは毎年コンベンションセンターの外側に特設テントを設け、気合いの入ったプレゼンテーションを行うBMW。一昨年にはフリーウェイ上での自動運転テストドライブを行ったり、と常に他社に先駆ける技術力の提示を行ってきた。
そのBMWだが、今年の展示の目玉となったのがVision iNextと呼ばれる次世代自動運転クロスオーバー車。実はこの車、CESがワールドデビューというわけではなく、昨年11月末に開催されたLAオートショーで最初にお披露目された。しかしその時は記者会見での説明で2021年の販売を目指すこと、レベル3の自動運転機能を備えた車であること、などが説明されたのみだった。
しかもオートショー会場にこの車があったのはメディアに対する記者会見の1日のみで、一般公開を前に車はブースから撤去されていた。つまり細かな機能などを含めた本格的なデビューには最初からCESが想定されていたのだ。
余談となるがCESは「世界最大の家電ショー」と呼ばれるが、現在は展示のおよそ5分の1が自動車関連で、CESでワールドプレミアを行う自動車メーカーも多い。今やCESは世界最大のオートショーでもある。日程の近いデトロイトオートショーが来年から6月開催に変更されたが、これもCESとの兼ね合いから、と言われている。
CESでのBMWだが、今年は大型SUVであるX7がLAオートショーでデビューし、その試乗体験が提供されていた。45度の急角度の昇降でSUVとしての実力を見せる、というもので、大勢の人々がこのイベントを楽しんでいた。
そしてVision iNextについては、車本体の展示とは別に「体験ルーム」が設置されており、車の新しい機能を実際に確かめることが出来た。自動運転の様子をVRヘッドセットで体験、というのはすでに多くのメーカーが行っているので特に目新しくないが、BMWのビジュアル技術にはやはり他にはない独特のものがある。
まず、Vision iNextのバックシートを模したものが設置されており、そこに座りシートの中央部分に指を触れるように言われる。するとファブリックの普通のシートに、指の動きに合わせてLEDが点灯する。丸を描くとオーディオがスタートしたり、指3本でシート上のLEDをスワイプさせるとモニター画面が切り替わったりする。シートの座面上でジェスチャーにより車内エンターテイメントシステムの切り替えが可能なのだ。
これについてBMWは「前の座席にはモニタースクリーンが設置されていて様々なコントロールを行えるが、後ろに座っていても同様に車の機能をコントロールできる、車のどこにいても等しく車の機能を楽しむための工夫」だと説明する。後部にわざわざ小型のモニターを設置するのではなく、シートに指を置くだけで様々な機能コントロールができる、という点が新しい。これはインテリジェント・マテリアルという技術で、スペースを節約しながら車内のどこにいても情報に接することができる、という工夫だ。
さらに目新しいのが車内プロジェクターの存在だ。このプロジェクターはバックシートだけではなく車の中のどこにでも設置が可能だというが、プロジェクターが照射する対象としてVision iNextのオーナーに渡されるのが「ホワイトブック」というノートだ。
このノートはほぼブランクなのだが、例えば「車のデザイン」と書かれたページにプロジェクターを照射すると車のデザイン画像が浮かび上がる。写真などのコンテンツを照射することも可能だ。そしてページ上を指でスワイプすることによりコンテンツの内容を変えることができる。インテリジェント・ビームと呼ばれるテクノロジーだが、本のページ上でプロジェクターを操作できる、という点が非常に目新しい。
車内にはインテリジェント・パーソナル・アシスタントという機能も設置されており、「Hey BMW」と呼びかけるとスマートホームネットワークに接続できる、などIoT機能が利用できる。
BMWはiNextについて「初めてすべての未来のモビリティの鍵となる技術を1つの車に詰め込んだプロジェクト」だと説明する。自動運転、コネクテッド、新しいマテリアルやプロジェクターによるインタラクティブ技術など、納得の内容だ。BMWはさらに進化を続ける。
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