年金受取を70歳まで待つために老後資産を使うのが最適な「運用」
筆者は最も頼もしい老後資産運用は公的年金だと思っていますから、まずは公的年金の受け取り開始を70歳まで待って、毎回の年金受取額を42%増やしましょう。そのために、65歳から70歳までの生活費として老後資金を使うのです。それが最適な老後資産「運用」だと思います。
65歳から70歳までの間に受け取れるはずだった年金を「保険料」として政府に納め、「長生きしてもインフレになっても大丈夫な保険」に加入するわけですから、考え方を変えれば「65歳時点で持っている金融資産を政府に保険料として支払うのが最良の資産運用だ」という理解も可能でしょう。
その上で、70歳時点で残っている資産を適切に分散投資すれば良いのです。普通の庶民は、70歳まで年金を受け取らずに金融資産を取り崩して行くと、たいした金額が残らないはずなので、目くじらをたてて資産運用を論じる必要は薄いのかもしれませんが(笑)。
判断力が衰えて行くことを意識しよう
高齢者が気をつけなければいけないのは、今後次第に難しい判断ができなくなって行くという可能性です。したがって、資産運用も複雑なことは避けましょう。相場を見ながら売買のタイミングを考えるのではなく、相場に関係なく淡々と日本株の投資信託と米国株の投資信託(為替ヘッジなし)を購入し、必要に応じて取り崩す、ということで十分だと思います。まあ、若者でも初心者が相場を見ながら売買のタイミングを考えるのはやめた方が良いと思いますが(笑)。
たとえば賃貸不動産などを持っていると、認知症が深刻化した時などに契約の更改や物件の売買などが出来ずに身動きがとれなくなる可能性がありますから、その手のリスクについても考えておく必要がありますね。
余談になりますが、認知症や寝た切りになった場合に備えて、資産の一部を配偶者や子に贈与しておく事も選択肢でしょう。「自分が動けなくなったら、この金を老後の生活費にして欲しい」というわけですね。
それから、争族を避けるために遺言は必ず書きましょう。遺言に添える財産目録も作っておきましょう。ヘソクリは、生きている間は見つかりたくないものですが、自分が他界した後も誰も見つけなかったら、もったいないですから。遺言と、ヘソクリの場所を記した書類を封筒に入れて封をして、封筒の存在を家族に教えておく、といったことは心がけたいものです。
本稿は以上です。なお、読者の中には「年金はどうせ受け取れないのだから、頼るのは危険だ」と考えている方も多いでしょうが、そういう方には是非拙稿『公的年金は破綻しないから、しっかり頼ろう』をご覧いただきたいと思います。
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