足立倫行のプレミアムエッセイ

2019年1月29日

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 私はホンジュラスは知らないが、グァテマラにはビザの更新で行ったことがある。

 グァテマラ・シティで2泊し、メキシコ大使館で6ヵ月滞在再延長の手続きをして、メキシコ側に帰ってくるとドッと疲れた。それほどメキシコとグァテマラの空気は違った。

 まず国境の出入国事務所である。窓口に立ったとたん、有無を言わさず2人の係官にトイレに連れ込まれ、髪を鋏(はさみ)でバサバサと切られた。「やや長め」にすぎなかったが、彼らは「ヒッピー・ヘア厳禁!」と言い張る。

 バスに乗ると、両脇のジャングルに何台もの車が仰向けになって転がっていた。

 そして首都。夜中にあちこちで銃声が響く。翌日ホテルのフロントで聞くと、「まだ反政府ゲリラが活動しているから」……。

 日本で暮らしていると、政治・経済・歴史・文化の違う国が地続きであることや、国境を越えると習慣・人情が一変することは、なかなか理解しにくい。しかし世界的には、海に囲まれ国境が見えない方が特殊なのだ。

 前述の新聞報道によると、新たな「移民キャラバン」のうち、私が半世紀前に渡ったグァテマラ・メキシコ国境のスチアテ川の橋をすでに越えたのは約2000人だという。

メキシコで受け止めきれるのか?

 昨年末誕生した左派のメキシコ大統領ロペスオブラドールが、人道的見地から避難民受け入れに前向きなのは朗報だが、それを上回りそうな懸念もある。

 1つは、メキシコではなくあくまでアメリカを目指すキャラバンの多数派に対して、トランプ政権が拒否姿勢を崩さず、警備強化と国境の壁建設に固執していること。

 もう1つは、南米ベネズエラの反米独裁左派のマドゥロ政権が崩壊寸前であり、もしも崩壊すれば、今年中にも人口の2割近い530万人が移民や難民として国外流出する見通しがあることだ(国連予測)。

 ベネズエラ難民の5%がアメリカを目指したとしても約26万5000人。シリアやイラク難民がイギリスやEUに深刻な亀裂を与えたように、ホンジュラスやベネズエラの難民も、世界一の富裕国の分断をさらに深めるのだろうか?

  
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