Washington Files

2019年1月28日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

沈黙を守り続けている大統領

 ホワイトハウスでコメントを求められた大統領は「一体、何の騒ぎなのか、いちいちフォローしていない」とだけ答えただけで、その後もこの件については沈黙を守り続けている。

 実はそれには、深いわけがあった。

 大統領はかねてから、キング議員とは昵懇の間柄で、昨年11月中間選挙でキング氏が9選をめざし立候補した際にも、同候補の支援に回った。

 キング氏の選挙地盤である第5選挙区は、これまで伝統的に共和党が独占、民主党は毎回の選挙で敗退してきたが、前回選挙では彗星のように現れた民主党若手候補を相手に大接戦となった。この間、大統領個人による2度にわたる現地でのテコ入れが功を奏し、最後は数パーセントの差でかろうじて当選を果たす結果となった。

 さらに投票後、大統領が早速ツイッターで「私は中間選挙では他のどの共和党候補に対してよりもキング議員を応援してきた」と書き込み、その支援なしには敗退していた可能性を示唆したところ、同議員は「トランプ氏はそれ以上に私に借りがある」と強気で応じたことも大きな話題となった。

 この点に関しては、アイオワ州の現地紙報道によると、キング議員はかなり以前から、トランプ氏に対し、2016年大統領選への出馬を強力に後押ししてきただけでなく、立候補表明後も同候補のために「白人至上主義政治」を唱導する“プレイブック”(脚本)書きまで引き受けてきた。そしてその中には、中南米からの不法移民を締め出すためのメキシコ国境の壁建設まで含まれていたという。

 実際にトランプ氏は、選挙戦を通じ全米各地の遊説先で繰り返し“Build the Wall!”のスローガンを支持者たちにアピールしてきたが、この「壁建設」を自らの最優先の「選挙公約」に掲げたことが最後に勝因の一つになった面も否定できない。

 そしてもし、伝えられる通り、こうした筋書きをキング議員が書き、それを大統領が今日にいたるまで踏襲してきたことが事実だったとすれば、二人の関係は一片の「白人至上主義」発言で揺らぐほど軟弱ではないということになる。

 この間、「壁建設」をめぐる大統領と議会民主党との対立で1カ月以上も一部閉鎖状態だった政府各省庁は25日、ようやく再開の運びとなった。「2月15日まで」の期限付き暫定合意によるもので、それまでに双方が歩み寄り関連予算案が成立しなければ、再び政府閉鎖に追い込まれる可能性も残されている。

 他方、今回、議会共和党が、壁の必要性を早くから訴えてきたキング議員に対し「委員会除斥」という厳しい措置をとったことで、静観を続けるトランプ大統領との間に生じた溝を今後どう埋めていくのかも注目されよう。

  
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