2024年12月12日(木)

インド経済を読む

2019年1月29日

iStock / Getty Images Plus / vipin jaiswal

 今からもう2年以上前の2016年11月8日の夜8時、私がインド・ニューデリーのレストランで食事を楽しんでいると、インド人の友人から1件のショートメッセージが届いた。

「大変だ! 4時間後から500ルピー札と1000ルピー札が使えなくなる!」

 急いでスマホでニュースを確認すると、政府が緊急声明を発表していた。

「本日の夜12時をもって、高額紙幣である現在の500ルピー札と1000ルピー札の使用を禁止する。それに代わる新たな500ルピー札と2000ルピー札を発行する」

 日本で例えるなら「5千円札と1万円札の使用を禁止する」と発表されるようなものだ。私は慌てて食事を平らげると、まだ辛うじて使える1000ルピー札で支払いを済ませレストランを後にした。

高額紙幣を使用禁止した「2つの狙い」

 自宅に戻り改めて政府の通達を確認すると、「25万ルピーまでは、年内であれば旧紙幣の銀行口座への入金を受け付ける」とのこと。ひとまず安心したものの、翌日から毎朝、銀行の前に長蛇の列が並ぶようになったため、混雑が緩和するまで私は結局入金を待つことにした。

 当面の生活で使う現金(新紙幣)は、ATMから引き出せることになっているのだが、こちらも長蛇の列。引き出せる金額も当初は一日4000ルピー(日本円で約6400円)と発表されたが、あまりに多くの人が殺到したため一日2500ルピーに減額され、生活に必要な現金を確保するのも困難な状況となった。

 その間にも様々なニュースが流れてきた。

 政府発表から3日後の11月11日、500万ルピーもの大金を現金で家に保管していたハイデラバード近郊の高齢女性が、全財産が紙屑になったと思い込み自殺してしまう悲劇が起きたのである。

 なぜこのような混乱を起こしてまでインド政府は「高額紙幣使用禁止」を断行したのか。あれから2年が経った今、その目的と成果を改めて検証してみたい。

 まず、政府の目的は大きく2つあったと考えられる。1つ目が「ブラックマネーの撲滅」、2つ目が「電子決済の普及」である。


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