名門校、未来への学び

2019年2月20日

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 そんな悩める高校生だった山名さんですから、お笑いの道を志すことになるとは夢にも思っていなかったようです。「関西に住んでましたから、もちろんお笑いの番組は食い入るように見てましたよ。千原兄弟さんのネタなんかすごく好きだった。友達にもお笑い好きのやつがいて、ラジオにハガキ投稿するのが上手くて。そいつロンブー(ロンドンブーツ1号2号)の淳さんに気に入られて、東京で何日か世話になったんですよ。うらやましかったなあ」。

 それでも、自分が表舞台に立とうとは思わず。「高校の文化祭で、その友達が2人で漫才やってたんです。すごく覚えててますね。きれいな漫才するなーって思った。でも、『あれくらいなら俺のほうがおもしろいわ』って強がってました。って、別に相方はいなかったし、勇気もなかった。そもそもお笑いの道に進もうとは考えてませんでした」。

他の芸人を観てて『こいつええ学校出てるやろな』と感じることが多い

 大学入学後、やはり将来の道をまた探せずにいた山名さんに、転機が訪れます。「とんねるずさんの番組をテレビで見て、もう体中がしびれたんですよ。運命の出会いでしたね。何やこの人たち、めっちゃ面白いやん!って。『絶対俺、この道行こう』って決めた。その日に。それで、今度こそ、ほんまに大学やめたんです」。そして2003年、山名さんはNSC(吉本の養成所)に入学します。

 「ほかの芸人観てると、選ぶ単語とか、落ち着き、ネタの構成とかで、『こいつええ学校出てるやろな』って感じることは多いです。本人に聞くと、だいたいあってますね」。そんな芸人さんのネタは、知性を感じさせるネタや、クイズ番組の設定で知識を絡めるネタなどをよく見ますが、アキナの漫才やコントはどちらかというと個性的で、言葉の雰囲気もやさしい印象。

 それでも山名さん自身、ネタを作るときに何でもない言葉でも、チョイスを意識していると言います。「たとえば『自分のことをそんなに下に見ないでええやんか』って励ますフレーズを、『自分を卑下しないでええやん』って持って行ったほうがカチッとはまることがあるんです。一方で、客席で見てる人の中には小さい子もいるから、『卑下』ってワードがすぐに理解できないかもしれない。それが難しい言葉でも、同じ意味の言葉をいろいろ探して考える、ってのはすごく意識してますね。ただね、相方の秋山君がアホなんで、まず相方を理解させないといけない(笑)」。

現在の校舎を見て懐かしむ山名さん。当時休み時間や放課後には、廊下に机を出して勉強していたとのことですが、いまも彦根東高校では、放課後に廊下で勉強する生徒の姿が多くみられます。

 実は山名さん、自身も高校時代から、テレビ番組で発せられる言葉を辞書で調べていたといいます。面白くて、クレバーな単語も使える芸人さんには憧れていたとか。また、当時学校で使っていたノートは、見開きの左ページに殴り書きで板書を移すと、右ページに「清書」することもあったそう。実際、いまネタを書くときは、同じようにノートに書いているそうです。そんな真面目で研究熱心な性格が今につながっているのかもしれません。

 何より、大変な仕事の多い芸人生活で、苦しいときに思い出すのは大学受験の思い出だそうです。「落ちこぼれでしたけど、それでも受験勉強はめちゃくちゃやりました。3年生の1年間だけやけど、1日10時間以上はやってた。今の自分があるのは、あの時苦労した自分がいるからやって。20年経ちますけど、まだ思い出すんですよ。あれだけ嫌でも頑張ったんやから、今仕事嫌がれないやろって。大事なコントや漫才の大会前でも思うことありますね」。

 

 たしかに進学校と呼ばれる学校に入ったのち、「落ちこぼれる」生徒も少なくありません。しかし、そこでの経験が、いつどこで自分の将来につながるかわかりません。「バスケ部のメンバーとは今でも連絡とってますよ。国立大行ったけどそのあとDJになって、で今度は弁護士になった先輩もいたりして、面白い人が多いんです。自分と違う境遇の人たちの存在って、今でもすごく刺激になってる」。

 当時の思い出を振り返り、最初は恐縮しきりだったのが、徐々に表情を和げる山名さん。そこで、「落ちこぼれっておっしゃいますけど、やっぱり名門校と呼ばれる学校に行ったことは、山名さんにとってとても大きかったのでは?」と聞くと、「いま色々思い出してたら、確かにそうだなあって感じますね。意識の高いメリハリついた人間が集まって、人脈もそうですし、刺激受けたし。ほんとに、いい時間だったと思います」と、噛みしめる表情に。

 学生時代からお笑いの道に進む人たちも多くいますが、学生の本業は勉強や!と言わんばかりに、若い方々にメッセージをくれました。「最終的にはどの道に進んでもいいと思います。でも、学生時代に勉強して損はない。それだけ自分の可能性が広がるのは事実だと思いますし、全力を出したって経験が大事。だから、とにかく勉強頑張ってほしい!子供ができたら、絶対そう伝えようと思ってます」。

 3月リリースのアキナのDVDには、この数年で作り上げたコントを詰め込んだといいます。「漫才は昔のネタを繰り返し使うこともあるんですが、コントは自分の中で燃え尽きたネタに関してはもうしないことにしていて」。今後もう見れない幻のコントが詰まった作品だそうです。山名さんの人生の1頁を彩った珠玉のコントのセリフから、選りすぐりの「クレバー」で深いワード、探すのも面白いかもしれません。

DVD『アキナ2』2019年3月27日(水)発売(ファンによるもう一度見たいネタランキングから選んだコントで構成された、19年1月実施の「アキナコレクション」を収録。)

山名文和(やまなふみかず):1980年07月03日生まれ。出身地:滋賀県 東近江市。2003年NSC大阪校26期生。
アキナ:結成年月:2012年。山名文和と秋山賢太(あきやまけんた)のコンビ。コントの日本一を決める「キングオブコント」では3度決勝進出しているほか、15年にNHK上方漫才コンテストで優勝、17年のNHK新人お笑い大賞受賞。秋山は今年2月に朝日放送(ABC)の塚本麻里衣アナウンサーと入籍を発表。

  
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