この熱き人々

2019年3月26日

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吉永みち子 (よしながみちこ)

1950年、埼玉県生まれ。85年、『気がつけば騎手の女房』で大宅壮一ノンフィクション大賞を受賞。著書に『母と娘の40年戦争』(集英社文庫)、『怖いもの知らずの女たち』(山と溪谷社)、『試練は女のダイヤモンド』(ウェッジ)などがある。

 その中には、あまりに奇をてらった着こなしや、流行にいっせいになびく風潮へのちょっと辛口な綿谷の嘆きも時折垣間見える。

 たとえば、何でもかんでも素足履きする風潮に、スコットランドの伝統舞踏靴のギリーシューズまでも素足履きして縞縞に日焼けした足のイラストとともに「ギリ—ブローグの素足履きは禁止します!」。さらに、「本来の履き方を理解した上で履き崩すからカッコいいのだ」と耳の痛くなるひと言が添えられる。

 「基本をわかった上で崩すのと単に崩すのとでは違います。外しワザだと気取っても、単なる外れだろうというのもありますから」

 ファッションへの愛情が言葉の端々から伝わってくる。キャンプ、狩猟、夜の街探訪、バーの独り飲みなど十年周期で変わるという自身の趣味も、ファッションイラストレーションの背景のために生かされている。もちろんスマホも駆使している。

 「絵を描く前にそのポーズで写真を撮るんです。顔はいろいろな写真を参考に描けますが、服のどこにどんな皺ができるか、足を組んだ時ズボンはどのくらい上がるかなどを知るために、ポーズは自撮りします。前は現像に出す時間が惜しくてポラロイドで撮ってもらっていたので、スマホはアルバイトを1人雇っているくらい助かります」

 最後に聞きたいのは、カジュアルな服装が今イチ決まらない日本の男性へのアドバイス。

 「スーツはある程度法則がありますが、素の自分が出るカジュアルでお洒落に見せるのは難しい。一番考えるところです。まず、小さいところ、細かいところに気を使うことでしょうかね。靴下とか時計とかハンカチとか。靴下なんかけっこう目立って、お金をかけずにお洒落に見えるアイテムだと思いますよ」

 意外に目につくのが実は靴下。チラッと見えた靴下がたるんでいたり、ヨレヨレだったり、色が浮いていたりしたら……細部にこそお洒落の神は宿るということか。どうせ見えないからなどとゆめゆめご油断召されるな。肝に銘じておこう。   

南谷真鈴(みなみやまりん)。21歳。早稲田大学政治経済学部2年。ウエービーなロングヘアにコーラルピンクのウインドブレーカーのスポーティーな装いが、都心の公園の緑に華やかに映える。この若い女性が、日本人最年少の19歳でエベレスト登頂に成功し、その2カ月後に日本人最年少、女性では世界最年少で7大陸最高峰登頂も達成、さらに南極点、北極点到達を加えた探険家グランドスラムを世界最年少の20歳で達成したと聞いたら、道行く人はどんな反応を示すのだろうか……。偉業を知っていてさえ、記録達成までの過酷さと目の前の都会的な雰囲気の漂う女子大生の間の落差を乗り越えないと、南谷真鈴の像が結べないよ

阿部吉泰=写真

  
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◆「ひととき」2019年3月号より

 

 

 

 

 

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