名門校、未来への学び

2019年3月19日

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鈴木隆祐 (すずき・りゅうすけ)

ジャーナリスト

1966年長野県生まれ。法政大学文学部在学中より出版社で雑誌編集を始め、その後フリーに。著書に『名門高校人脈』(光文社新書)、『名門高校 青春グルメ』(辰巳出版)ほか。

北野高校の『六稜魂』

 北野高校のいわゆる『六稜魂』(註)も、今この歳になるとよくわかる気がしますね。いすゞ時代の留学やGM派遣、欧州駐在と、僕はいつも自分から手を挙げてきました。そうやって積極的に動く部下を嫌う上司はいませんから。英語は、北野にいたせいかもしれないけど、留学でも仕事でも苦労したことはありません。

中村史郎さん(筆者撮影)

 それに北野に通ってよかったな―と思うのは、美大に行って痛感したんだけど、中には感性だけで突っ走るのもいるわけですよ。一方、北野って学力が単にあるだけじゃなく、一人一人がしっかり自分の考えを持ってるんですね。高校にいる頃から、真面目に勉強し、京大に入ろうという連中と接してるわけですから、自ずとクリエイティブとマネジメントの両方の立場や考えがわかるんです。僕はその間を取り持てばいいんだって」

 中村さんのバランス感覚は音楽に拠るところも大きいのかもしれない。ジャズの核は実はリズムとハーモニーの基礎を造るベースなのだ。ピアノ、ドラム、ギターと楽器が増え、デュオがトリオ、クァルテットやクィンテットとさらに膨らんでも、ベースラインのないジャズは考えがたい。あっても、相当物足りない。

 そんな中村さんのジャズ奏者としての最大の自慢は、天才的なピアニストのハービー・ハンコックとの共演だという。日産に入社し、ニューヨーク滞在時、現地ニューヨークタイムズに「ジャズをプレイするデザイナー」と紹介され、それを読んだハンコックが面談を申し出たのだとか。以来、交流が続いているという。

 「その時ほど、ジャズでプロにならなくてよかったなぁ、と思ったことはないですね。カーデザイナーになったからこそ、憧れのハービーとプレイできた。音楽では到底そこまでのレベルには達せなかったと思いますよ」

 どこかあどけない笑顔でそう語る中村さん。高校時代の面影もそこから充分に偲べた。親友の酒井さんがピアノを奏でる音も、うっすら聴こえてくるような気がした。

 註:尖った六角形の独特の校章に因んだ、学校が尊んできた逞しい精神をそう呼ぶ。

 取材協力:株式会社ミーミル

  
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