前向きに読み解く経済の裏側

2019年4月1日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

経済評論家

1981年 東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の業務に従事。2005年 銀行を退職して久留米大学へ。現職は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は一個人として行うものであるため、肩書きは「経済評論家」とする。

米国の方が日本よりインフレ体質

 米国の方が日本よりインフレになる可能性が高そうです。単に過去のインフレ率が高かったというだけではありません。インフレになった時に、それが加速する可能性が高そうだ、という点が問題なのです。その分だけ、MMTのリスクは高いと考えて良いでしょうから。

 インフレになると「買い急ぎ」をする傾向が、米国人は日本人よりも強いようなのです。日本人はインフレになると買い急ぎをするインセンティブと並んで「老後のための貯金が目減りしてしまったので、倹約して貯蓄に励む」というインセンティブも持ちますが、米国人はそうでもないようです。

 もともと楽天的で将来不安を日本人ほど感じないという国民性もあるのでしょうが、「インフレになると賃金が素直に上がる経済体質」「金融資産が株式などインフレに強いもの中心なので、インフレでも目減りしない構造」なども影響しているかもしれません。

基軸通貨の混乱は世界的な影響が大

 日本経済が混乱しても、日本の金利が急上昇しても、日本の円が暴落しても、影響は日本中心に発生するだけで、世界経済への影響は限定的なものにとどまるでしょうが、米国で同じことが起きると影響は世界中に広がります。それは、米国の通貨である米ドルが基軸通貨として世界中の貿易や投資等に使われているからです。

 米国の金利が急上昇すると、世界中の金の貸し借りが混乱します。米国のインフレを止める目的で利上げをすると、米ドルを海外から借りている途上国の経済が破綻したり、世界的に株価が暴落したりするわけです。

 そんなことになっても米国のインフレを止める効果は見込まれないのに、迷惑だけ世界中にかけるわけですね。そんなリスクを世界経済に負わせないでいただきたいものです。

 さらに問題が深刻化すると、基軸通貨が交代する、といった思惑が生じるかもしれません。そうなれば、世界経済の混乱は計り知れないものとなるでしょう。幸か不幸か現在はドルに代わって基軸通貨となり得る通貨が見当たらないこともあり、その可能性は非常に低いとは思われますが、影響の大きさを考えると、確率は低くても被害の期待値は無視できないと言えそうです。

 以上を総合的に考えると、筆者は米国がMMTを採用することに反対せざるを得ません。もっとも、米国が「米国ファーストだから、他国への悪影響など考慮せずに、米国経済だけのことを考えてMMTを採用する」と言い始めたら、止める術はありませんが(笑)。

  
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