動員力と熱気
では訪日直前に行われたトランプ大統領の集会も紹介しましょう。トランプ大統領の大抵の集会は午後4時開門、7時開始です。開始7時間前には会場に到着していないと入場することは困難でしょう。昨年の米中間選挙で西部モンタナ州のトランプ集会に参加したとき、同陣営のスタッフが昼の12時が、入場できるか否かの分岐点になると筆者に語っていました。
トランプ大統領が支持者集会を開催したペンシルベニア州モントゥアズビレは、人口4500人ほどの小さな街です。筆者がイベント開始11時間前の午前8時に到着すると、すでに徹夜組を含めて約100人が列を作って並んでいました。
アジア系は筆者のみで、列をなしている間、白人のトランプ支持者の目線を常に感じました。筆者が観察する限りでは、アフリカ系(女性)も1人でした。人種や民族といった文化的多様性に欠ける集会であったことは確かです。
集会場はローカル空港にある格納庫で行われました。地元メディアは、街の人口よりも多い1万人が詰めかけるだろうと報道していました。格納庫の収容人数は2、3000人程度なので、かなりの支持者が入場できず会場の外に設置された大型スクリーンでトランプ大統領の演説を聞いたことになりました。トランプ陣営は動員力で、バイデン陣営を上回っているとみてよいでしょう。
トランプ集会では支持者が、「国境の壁を造れ!」「国境の壁を仕上げろ!」「ヒラリーを収監せよ!」「USA!USA!USA!」「CNNはむかつく!」「AOCはむかつく!」と叫んで、合唱を始めます。AOCとは史上最年少で下院議員になったアレキサンドリア・オカシオ・コルテス氏(民主党・ニューヨーク州第14選挙区選出)を指しています。支持者から攻撃的な言葉が飛び交い、騒然とした雰囲気の中で行われるのが、トランプ集会の最大の特徴です。
筆者は前から3列目でトランプ大統領の演説を聞きました。集会ではトランプ大統領が、筆者の左斜め前にいたメキシコとの「国境の壁」を模したスーツとネクタイを着用していた白人男性を舞台に挙げ、彼に謝意を述べるという場面がありました。このとき、会場の熱狂度は最高に達しました。
この白人男性は翌日米メディアに取り上げられ、「時の人」となりました。ネット上では「国境の壁」をデザインしたスーツは、即座に売り切れになったそうです。これもトランプ支持者の「熱狂度」の指標の高さを示しています。
結局、支持者の熱意のレベルを比較すると、トランプ陣営がバイデン陣営よりも高いことは間違いありません。もしバイデン氏が民主党から大統領候補の指名を受けた場合、前回のクリントン氏と同じ運命が待ち受けているかもしれません。
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