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2019年7月2日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

核、ICBMの凍結が新しい条件

 首脳相互訪問の実現までには曲折があろうがそれは別として、肝心の核開発問題が今回の板門店会談によって進展したかといえば、そうとはいえないようだ。

 劇的な会談を自賛するトランプ、金正恩の発言はすでに報じられているが、会談の意義については、各国のメディアも大きな見出しとは裏腹に、冷静さが目立つ。

 7月1日付朝日新聞は、「隔たる主張 進展は不透明」という見出しで「歴史的意義は大きい」と認めながら、「最大の懸案である非核化はなおざり。具体的な進展はなかった」と論じた。同読売新聞も「電撃会談 演出優先」として「パフォーマンスにたけ、〝史上初〟を好むトランプ氏は、世界に生中継される板門店を最高の舞台装置ととらえていたようだ」と〝見せ場〟優先の大統領の意図を分析した。

 米ロサンゼルス・タイムズ(電子版)はブッシュ政権(子)で国家安全保障会議(NSC)アジア部長を務めたビクター・チャ氏の「非核化交渉、検証可能な合意、平和条約につながったときだけ、歴史的といえるだろう。さもなければ、野外劇に過ぎない」という辛口コメントを紹介。

 さらに、オバマ政権で国家安全保障担当補佐官のアドバイザーを務めたサマンサ・ビノグラド氏の「トランプ氏はゴール・ポストを動かした」の見方を伝えた。同氏は当初の「完全で検証可能な朝鮮半島の非核化」という要求から、米国に到達する大陸間弾道弾(ICBM)、核実験を停止さえすれば核兵器の存在そのものには目をつぶる「現状維持」へとトランプ氏が大きく方針転換したと分析する。

 読売新聞も同様に、トランプ氏が板門店、ソウルなどで記者団に「この1年半、核実験、ミサイル実験はない」としきりに現状を評価する発言を繰り返したことに触れ、「大統領選を控え、『現状維持』を重視するようになったとの見方が支配的だ」と報じた。

 北朝鮮による5月の短距離ミサイル発射に対して、自らの側近や同盟国、日本の安倍首相らが、いずれも北朝鮮を非難しているにもかかわらず、トランプ大統領があえて問題視しない態度をみせたのも、方針転換による結果とすれば、それなりに説明はつく。

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