2024年7月16日(火)

インド経済を読む

2019年8月9日

日本人も他人事ではない「ペナルティ」の強化

 この富裕層へのペナルティやサーチャージの強化は何も税制だけに限った話ではない。

 今月8月1日に発表された会社法の新しいコンプライアンスのルールでは、従来非公開会社であればある意味実務上見逃されていた会社法上のコンプライアンス違反の一部に関し、従来のFineという表現からハッキリとPenaltyという強めの文言に変更されることが決まり、会社登記局本部からの通達なしにそのペナルティを課すことができるようになった。加えてそのペナルティがコンプライアンスを守っていない会社にではなく、その取締役に直接課せられる可能性も明記されている。

 シッダールタ氏のような巨大な企業の取締役は、会社自身の取引が大きいがゆえに常にこの「コンプラ違反を原因とする個人への巨額のペナルティ」におびえながら会社運営を行う必要があることになるのだ。

 また、これは何もシッダールタ氏クラスの富豪に限った話ではない。私たちインドでビジネスをする日本人にも関係する問題となる。

 2013年の会社法改正でインドの全ての会社は最低1名インドに居住している取締役を登録する義務が生じた。その際に取締役を全員日本においているような日系企業がインドに在住している日本人に対して形式上社外取締役を打診するということが現地インドではよくあった。引き受ける側も役員報酬ももらえるのでちょっとした小遣い稼ぎになると、何社も引き受けてかなりのお金を稼ぐ「社外取締役バブル」の様相を呈していた。

 しかし、そうやって軽い気持ちで引き受けた取締役には、上記のような重いペナルティが課せられるリスクがくっついていることになるのだ。

 インドの有名起業家を死に追い込んだ原因の一つとされる富裕層への課税やペナルティの強化。民主主義である以上選挙のたびにこの傾向は継続すると予想されるし、それに加えインドにおいては十分富裕層に該当する我々日本人もこれを対岸の火事とは思わず、適正なコンプラ順守を徹底する必要が出始めているのかもしれない。

  
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