日本では政府発表の雇用統計数値に意図的と思える改ざんがあったことが一時期話題となり、国会でも大きな論争になっていたが、その話題をネットで見ながら昨年インドでも似たようなケースがあったと思い出した。
昨年の11月末、インドの統計局は前政権時代のGDP成長率を見直し、下方修正すると発表した。これにより、平均して7%台後半の成長率を記録していた前政権時代の経済成長率は軒並み1%近く下がり、その平均は6.8%程度にまで下がることとなった。
統計局の説明では、現政権のGDP成長率の計算方法が前政権時代と異なるため、比較可能性を勘案して過去情報を修正することになったとのことだ。これは私が所属する財務会計の世界でもよくある話で、利益の計算方法が法改正で変わった場合、その比較可能性を維持するために過去の数字を新しい計算方法で計算し直すのだ。
ただ、今回のこの見直しについて、一部では政治的意図を勘繰る意見も根強い。なぜならこの下方修正により、現政権での平均経済成長率はわずかながら前政権時の平均を上回ることになったからだ。
インド国民だけでなく、インドを巨大な成長市場と見込む世界中の企業や投資家の期待を集め、2014年に発足したモディ政権だが、当初の期待が強すぎたせいか、昨年半ば頃からその人気に陰りが見え始めている。年明けには、支持率がついに5割を切った。4月の総選挙を控え、その前哨戦と言われる地方選挙でも軒並み負けが続いており、モディ政権は今、非常に苦しい政権運営を強いられている。
参議院選挙を控えた安倍政権が焦りを感じ、その結果、毎月勤労統計の改ざんが起きたのでは……と勘繰られているように、総選挙で苦戦が予想されるモディ政権がその焦りから過去の経済成長率を下方修正し、「我々の経済運営も悪くなかったんですよ」とアピールしようとしていると勘繰られているのだ。