オトナの教養 週末の一冊

2019年8月9日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

――彼らは、経済状況が悪くても福祉に依存しない特徴がありますね。

『新たなマイノリティの誕生―声を奪われた白人労働者たち』(ジャスティン・ゲスト 著、吉田徹,西山隆行,石神圭子,河村真実 翻訳、弘文堂)

西山:先に述べたような家族の中での成功物語という背景があるからなのか、男が稼ぎ、家族を食べさせ、誰にも頼らないという一種のマッチョ的な思考を持つ人たちが多いですね。

 彼らからすると、実態は別として移民や黒人は福祉に依存しているというイメージが強いようです。特にウェルフェアクイーンと言われる、福祉に頼り贅沢な暮らしをする黒人女性とそれに寄生する黒人男性への嫌悪がある。ただ、アメリカの福祉政策は、ニューディール政策の福祉政策、特にAFDC(児童扶養世帯補助)はもともと母親年金が出発点です。現在は、AFDCは廃止されて新しいプログラムになりシングルマザー以外へも拡大されていますが。当初はシングルマザーしか受け取れなかった。

 しかし、彼らが実態として家計を支えているかというと疑わしい。鉄鋼業の衰退に伴い、求人も少なく、フルタイムで働くことが難しいうえに賃金も下がっている。そうなると奥さんも働きに出ているわけです。相対的に家庭のなかでの地位は下がっています。

 また、WASPを中心とした成功した白人たちからは見下されている。福祉に頼る移民や黒人からはアファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)のもと逆差別を受けていると感じている。そうしたさまざまな屈折した感情が、剥奪感を抱く原因になっていると思います。

――福祉に関して彼らの不思議なところは、現物給付は受けるが、現金給付は受けないという意識です。

西山:現金給付を受けるのは施しを受けるようで嫌なのではないでしょうか。フードスタンプなどの食べ物を受け取るのはグレーゾーンで、医療関係の補助は受ける。現金に近くなると嫌だという区別が彼らのなかにはあるんだと思います。

――白人の低所得を表す蔑称でホワイト・トラッシュという言葉がありますが、彼らはその層とは違うのでしょうか?

西山:かなりの程度一致しています。ただ、ホワイト・トラッシュは南部で農業などに従事する貧しい白人労働者も含みます。彼らは宗教的にもプロテスタントで、支持政党も共和党支持者の割合が高く、人工妊娠中絶や同性婚には断固として反対している。それに対して、ラストベルトの白人労働者たち、なかでもトランプの支持者は政治的、文化的、経済的剥奪感のなかでも経済的な剥奪感が重要で、宗教に関する問題や文化的な剥奪感の重要性は相対的に低いです。

――イギリスのイーストロンドンの白人労働者たちも経済的な剥奪感を強く感じているのでしょうか?

西山:イギリスの場合、階級意識が現在でも非常に強く、階級文化が政治と密接に関わってきます。ですから、文化的な剥奪感を感じる人たちが極右政党を支持する割合が多いようです。イギリスとアメリカの違いは、イギリスはアメリカに比べ福祉が充実しているため、経済よりも文化に目が行くんだと考えられます。

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