From LA

2019年8月24日

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 2028年の夏季五輪開催が予定されているロサンゼルス。予算そのものは東京のおよそ3分の1と言われ、民間の力を生かした効率良い大会運営が期待されている。しかしそのロサンゼルスにも大きな問題がある。

 地元のロサンゼルスタイムズ紙が8月12日付でショッキングなタイトルのコラムを掲載した。「ホームレス危機は2028年ロス五輪にとっての福島だ」(『Homeless crisis could be the Fukushima of the 2028 Los Angeles Olympics』)というもの。ここで福島の名前を持ってくるのが適切かどうかという疑問は残るが、ロサンゼルスにとってホームレス問題は、日本の原発事故問題と同じく深刻な問題であるということだ。

(fotofritz16/gettyimages)

 今年6月に発表された人口統計によると、ロサンゼルス周辺のホームレス人口はおよそ3万6000人。全米のホームレスが60万人と推計され、カリフォルニア州では12万人、全体の20%以上を占める。そしてそのうちのおよそ3分の1がロサンゼルス周辺に集中していることになる。

 特にダウンタウン周辺にはスキッドロウと呼ばれるホームレスが住み着いている地域があり、治安面、衛生面でも大きな問題となっている。付近には五輪の会場に使用される予定のあるステープルズ・センターなどもあり、観光の面からも大きな問題だ。

 ホームレス問題は一朝一夕に解決するものではない。そのため、2028年を目指して今から取り組みが始まっているが、その内容には驚かされるものも多い。

 例えば来年完成予定の72室を持つ低所得者向け住宅。共同住宅の施設としてフィットネスセンターなども備えられたコンプレックスは、今若者の間で人気のトレンドスポット、コリアンタウンに建設中だ。このアパート、一室あたりの建設費用が69万ドル。ロサンゼルスの住宅の中間価格、61万ドルよりも高いのだ。しかもこのアパートはほんの手始めで、あと2つのアパート建設プロジェクトが進行中だという。

 一般市民からすれば「自分達でも住めないようなアパートがホームレスや低所得者向けに、市民の税金で建設されている」という納得のいかない内容だが、ロサンゼルスの場合ホームレス人口が多すぎてシェルターが追いつかない状況だ。

 ついに裁判所までが「シェルターが足りない以上、ホームレスが路上生活することを認めざるを得ない」という判決を出したほど。これにより路上にテントを張って生活するホームレスは増加の一途をたどっている。市の予算を削ってでも、ホームレスを収容できる住宅建設は優先事項なのである。

 しかし市が予算をいくら計上したところで、3万人を超えるホームレスに無償の住宅を提供できる可能性は限りなく低い。また住宅を提供したとしても、仕事を提供できない限り福祉予算は縮小せず、新たに建設した住宅もすぐにスラム化する恐れもある。

 ロサンゼルスのホームレス問題は連邦議員らが視察に訪れるほどで、まさに危機的状態と言える。連邦下院議員、シルビア・ガルシア氏はロサンゼルス市のガルセッティ市長に対し「同市の『住宅地に車を停車させてその中で眠ることを禁じる』『市はホームレスが居住するテントなどを撤収する権限を持つ』という条例はホームレスを犯罪者扱いするものではないのか」と厳しく糾弾した。

 これに対し市長は条例を変更する予定はないこと、なぜなら「公園など公共の場所はすべての市民がアクセスする権利があり、ホームレスが公共の場所を一方的に占拠することは認められない」し、「ホームレスが生活する場所へのアクセスがないことにはソーシャルワーカーらが近づいて手助けすることも出来ない」ためだ、と説明した。

 また市長はロサンゼルス市が低所得者向け住宅2万戸の建設を中止せざるを得なくなったのは「連邦政府からの補助金が過去10年間で200億ドルもカットされ、市が財政難に陥っている」として連邦政府の予算の割り振りを批判した。特に今年は昨年比でホームレス人口が12%も増加して問題となっているが、トランプ政権下でカリフォルニア州への予算配分が大きく減らされていることと無関係ではない、と市は指摘している。

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