しかし、この二つを追って、今最も注目され発展が著しいのが風力発電です。昨年の同構成比でも水力、原子力に続いて大きい4.2%を占め、前年度の2010年と比べると75%増しの発電量となりました。普及速度も速く、昨年は354の風力発電機が自然条件が良い適地を中心に建設され、今年は現時点で既に405機の新設が決定されています。風景や生態系の破壊を懸念する開発反対の意見も耳にしますが、風力はいずれ原子力を超えるエネルギー供給源になるだろうと期待されています。
東日本大震災後、当時私が住んでいた街で日本人有志の方々が「ミツバチの羽根と地球の回転(監督:鎌仲ひとみ)」を上映してくださいました。原発建設計画に反対する山口県祝島の人々の運動をメインに、持続可能エネルギーの模索例としてスウェーデンの風力開発を取り上げたドキュメンタリー映画です。また、スウェーデンの風力発電への関心はEU他諸国にも広まっており、現在、原発の全廃止を決めたドイツをはじめ、スペインやオランダからも興味が示されています。
風力以外に、再生可能エネルギー政策の一環としてスウェーデンが打ち出しているのが、2003年に施行された電力免許状(Elcertifikat)というシステムです。これは再生可能エネルギー生産者を支援する制度で、水力発電、風力発電、地熱発電、波力発電、太陽エネルギーそしてバイオ燃料によって生産された毎1MWhの電力に対して国家から特許が与えられます。生産者はこれをもって、一般的に通常より高めの値段で電力市場に電力を販売することができるのです。
政府はこの支援政策を通して、再生可能エネルギーの生産量を2002年当時の75,3TWhから2020年までに25TWh増量し、100,3TWhにしようと目指しています。また今年1月1日からは、ノルウェーと結ばれた協定により両国間でこの免許状が利用できるようになりました。両国は2020年までに更に13,2TWh、つまり両国10%ずつの生産量アップを掲げています。
国民が電力会社を選べる
再生可能エネルギー政策に関与するのは、なにも産業界だけではありません。国民が自由に電力会社を選ぶことのできるスウェーデンでは、このエネルギーを供給する会社を選ぶことによって自ら政策に貢献することができるのです。
スウェーデンでは、賃貸や寮住まいの場合、契約先の電力会社はおのずと決まり、電気代も家賃に含まれます。しかし、家を購入するとなると、100以上ある電力会社の中から自分の生活に合ったものを選ばなくてはいけません。電気料金にも固定制と変動制の二つがあり、どちらを選ぶかは個人次第です。変動制とは、電力市場の供給可能量やその価格によって料金が変化するシステムで、固定制は、市場に左右されない一律の料金システム。しかし、どちらがお得かは一概に言えないのが悩ましいところです。
私達カップルも、ストックホルムへの引越しを機にアパートの一室を購入したのですが、電力選びには一苦労しました。結局、パートナーの彼に全てを任せて決めましたが、今回の記事をきっかけに少し調べてみました。変動料金はエネルギー税など全てを含めて89.1öre/kWh(10.87円。1kr=100öre)、私達が契約している2年契約制の固定料金は96öre/kWh(11.71円)と、3月上旬調査時点では変動料金の方がお得のようです。また、この電力会社は100%水力発電を利用しており、その特許代として4.9öre/kWh(0.6円)がプラスされていることが分かりました。知らなかったとはいえ、自分達が再生可能エネルギーを使用していたというのは嬉しいことです。