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2020年1月11日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

経済ジャーナリスト

1962年東京生まれ。1987年早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年3月末で退社、独立。現在、経済政策を中心に政・財・官を幅広く取材、各種メディアに執筆するほか、講演やテレビ出演、勉強会の主宰など幅広く活躍している。オフィシャルHP(http://isoyamatomoyuki.com/)

著書に『2022年、「働き方」はこうなる』(PHPビジネス新書)、『理と情の狭間 大塚家具から考えるコーポレートガバナンス』(日経BP)、『国際会計基準戦争 完結編』(日系BP)、『ブランド王国スイスの秘密』(日経BP)など。共著に『オリンパス症候群 自壊する「日本型」株式会社』(平凡社)、『株主の反乱』(日本経済新聞社)などがある。

早稲田大学政治経済学術院(大学院)非常勤講師、上智大学非常勤講師。ボーイスカウト日本連盟理事。静岡県ふじのくにづくりリーディングアドバイザーも務める。

日経ビジネスオンライン(日経BP)、現代ビジネス(講談社)、フォーサイト(新潮社)、月刊 WEDGE(ウェッジ)、月刊 エルネオス(エルネオス出版)、フジサンケイビジネスアイ(産経新聞社)などに連載コラムなどを持ち、定期執筆している。

【梅原 真(うめばら・まこと)】
1950年高知市生まれ。放送局の美術スタッフとして勤務後、独立。ローカルに拠点を置いて活動する。著書に『おいしいデ』、『ニッポンの風景をつくりなおせ 一次産業×デザイン=風景』(ともに羽鳥書店)など。(写真・生津勝隆、以下同)

 デザインの力で地域の一次産品に命を吹き込み、大ヒット商品を次々に生み出していく。そんなデザイナーが高知県土佐山田町にいる。梅原真さん。高知という「ローカル」に根ざし続け、東京など大都市にオフィスを構えたことは一度もないが、全国各地から仕事の依頼が舞い込んでくる。読者の多くも、知らず知らずのうちに梅原さんのデザインに触れているに違いない。

 ラベルに描かれたゆずの絵の上に「ゆずの村」と筆書きされたぽん酢しょうゆをご存じだろう。高知県馬路(うまじ)村の農協が1986年に売り出して大ヒット、今も百貨店や高級スーパーなどを中心に売れ続けている。このデザインも梅原さんによるものだ。

 ラベルでまず目に飛び込んでくるのが「ゆずの村」、次いで「馬路村」。「ぽん酢しょうゆ」は目立たない。そう、この商品のデザイン・コンセプトは、ぽん酢を売ることだけにあるのではなく、馬路村を「ゆずの村」として売り出すことにあった。人口約900人の馬路村は、今ではすっかり、「ゆずの村」として全国に知れわたった。「ゆずの村」関連商品の年間売上高は20億円を超える。

デザイン=経営資源

 デザインによって商品の価値を消費者に伝えるだけでなく、デザインがその商品の付加価値を高めていく。梅原さんが言う「コミュニケーション・デザイン」の要諦(ようてい)だ。商品そのものだけでなく、商品を生み出す地域の魅力を伝える。地域おこしの成功には、「デザインの価値を経営資源として認めることが第一歩です」と梅原さんは語る。

 「ゆずの村」が大ヒットしたころ、梅原さんは高知県西部の十和村(とおわそん)(現・四万十町十和)から「総合振興計画」の策定にアドバイスを求められた。高知市内から車で約2時間。愛媛県境に近い四万十川中流の中山間地にある村だった。林業の衰退で落ち込んだ村をどう立て直すか。「村の人は口を開けば、『何もない』と言っていた」と梅原さんは振り返る。

 国のおカネで、木造の校舎を潰して新しいプレハブ校舎に建て替えたり、沈下橋を壊したりして鉄橋を造る。それが「振興策」だと当時の村人たちは信じて疑わなかった。梅原さんから見れば十和には何もないどころか、四万十川の自然の恵みが豊富な素晴らしい土地だった。

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