2024年4月26日(金)

【中学受験】成功を導く父親の役割

2019年11月6日

 こうしたやりとりが続き、さすがに私もお父さんを受験指導から外さなければいけないと思うようになりました。そこで、こちらから無理を言って授業曜日を変えてもらうことにしたのです。それまでショウタくんのお父さんは、授業のある日は必ず同席していました。ショウタくんがミスをしたり、問題を解くのに時間がかかったりするたびに、「この問題はこの間やったじゃないか」「もっと早く解かないと時間がたりなくなるぞ」と横からダメ出しを入れ、それがショウタくんを萎縮させていたのです。そこで、まずはお父さんをショウタくんから離すことが先決だと考えました。

 それから、お父さんが同席できないように、授業の開始時間を早めることにしました。私の授業は通常2時間ですが、そこでじっくりショウタくんの指導にあたり、自信を持たせることが狙いです。ところが、お父さんは何が何でも関わりたい一心で、終了時刻ギリギリに汗をびっしょりかきながら帰宅してきます。その姿を見ると、「なぜお父さんは、ショウタくんの心の叫びに気づいてあげられないのだろう」とせつない気持ちになります。帰宅に間に合わないときには、お母さんに質問事項を託します。その中身もこと細かい質問がぎっしり。どうやら、このお父さんを変えるのは難しそうです。唯一の救いは、お母さんが冷静で、気になることを随時私に相談してくれることでした。

中学入試、最後は子どもが一人で戦うしかない

 10月に入り、6年生はいよいよラストスパートにかかる時期になりました。ショウタくんの成績は、お父さんが介入すれば下がり、介入しなければ上がっていくという状態をくり返していました。実に分かりやすいのです。近ごろ、お父さんは仕事に忙しいようで、ショウタくんの勉強にあまり関われていないようです。それが幸いに、ショウタくんの成績は徐々に伸びてきています。しかし、またいつお父さんが介入してくるか分からないので、油断は禁物です。

 できることなら、お父さん自身にそのことに気づいて欲しい。ショウタくんはお父さんから見ればまだ幼く、自分が引っ張っていかなければいけないと思っているのかもしれませんが、ショウタくんは今、自分の力で頑張ろうとしています。

 中学受験は子どもがまだ幼いため、どうしても親が引っ張っていかなければならないことがあります。でも、どんなに親が引っ張っても、入試に親が同席するわけにはいきません。最後の最後は自分の力で戦うしかない。そのときに最大限の力を発揮できる子どもは、「僕ならできる」という自信を持っている子どもです。その自信を与えるのは、塾の先生でも家庭教師でもありません。子どもが誰よりも大好きなお父さんとお母さんの他にはいないのです。ですから、親はわが子のためを思って「たくさんの課題」を与えるのではなく、「たくさんの自信」をわが子に与えてあげてください。その自信が何よりも大きな力になるのです。

(構成=石渡真由美)


  
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