俺の子が偏差値40の学校へ行くなんて……
志望校選びにおいて、偏差値は気になる存在です。しかし、そこばかりに目が行ってしまうと、親子にとってつらい中学受験になってしまいかねません。
首都圏に暮らすマモルくんは、難関中学入試に強いと評判の中学受験塾、SAPIXに4年生から通っています。マモルくんの学力は、1学年10クラスある中で下から2番目。決していいとは言えませんが、これまでお母さんと一緒にコツコツと頑張ってきました。
ところが、6年生になって模試の数が増えてくると、それまで仕事が忙しくてあまり受験勉強に関わってこなかったお父さんが、マモルくんの成績のことをあれこれ口出しするようになりました。
「なんだ? このひどい成績は……。偏差値45だと? 冗談じゃない」
「一体、今までいくらかけていると思っているんだ!」
とマモルくんとお母さんを責めます。
実は今、こういうお父さんがとても増えています。そして、そういうお父さん達にはいくつかの共通点があると感じています。それは、地方の名門高校を卒業し、都内の難関大学を出て、現在は一流の企業に勤めている、または医師、弁護士などといった特別な資格と能力が必要な職業に就いている方が多いという点です。
頭では分かっている。
でも、受け入れられない
首都圏の一部のエリアでは、今や4人に1人が中学受験をすると言われています。しかし、そうは言ってもそれ以外の多くは、今でも地元の小学校を卒業したら、地元の公立中学校へ進学し、人生初の受験を高校受験で経験するのが一般的です。多くの地方にとって、最高峰にあたるのがその県トップの公立高校です。これらの学校は歴史も古く、その学校独自の文化があり、地元では一目置かれる存在です。そういう名門校は偏差値70レベルの難関校で、各公立中学校の上位数名しか入ることができません。
そんな名門校出身のお父さん達にとって、偏差値40台の学校といえば、“勉強が苦手な子が集まる学校”というイメージしかありません。○○高卒の俺の子が、偏差値40? お父さんのプライドは許しません。
もちろん、これだけ優秀な方ですから、偏差値は母集団で変わることは理解しています。中学受験には4つの大きな模試があり、受ける模試によって偏差値も大きく変わります。例えば四谷大塚や日能研の模試であれば、SAPIX偏差値より約10上がり、首都圏模試であれば約20も上がります。しかし、その理屈は分かっていても、目の前の模試結果に偏差値40台の数字が叩き出されると、心の動揺を押さえきれなくなるのです。
でも、親がそこにこだわってしまうと、子どもは伸びていきません。特にお父さんがそう感じてしまうと、「お前はそんなところにしかいけないのか」と嘆いたり、口に出さないとしても表情に出してしまうことになるからです。すると、子どもは「どうせ僕はお父さんみたいに頭が良くないんだ……」と思い込み、勉強に対するモチベーションが著しく下がってしまうのです。マモルくんがまさにそうでした。