2024年11月22日(金)

【中学受験】成功を導く父親の役割

2019年8月23日

親のつまらないプライドが
入学後の子どものモチベーションを下げる

 では、SAPIX偏差値で40台の学校というのは、どのあたりの学校を指すのでしょうか?

 例えば首都圏の男子校であれば、偏差値40~45レベルの学校に城北(44)、攻玉社(45)、桐朋(47)などがあります。しかし、これらの学校は首都圏模試であれば偏差値65前後の上位校。決して学力的にレベルが低いというわけではありません。

 実際、卒業後の進路を見れば一目瞭然。各学校のホームページに掲載されている2019年度大学入試の合格実績を見ると、城北は東大12名、一橋11名、慶應義塾99名、早稲田168名、攻玉社は東大15名、一橋3名、慶應義塾100名、早稲田90名、桐朋は東大11名、一橋9名、慶應義塾89名、早稲田115名と多くの生徒が難関大学へ合格しています。また、これらの学校は歴史もあり、魅力的な学習カリキュラムもあり、それに惚れ込んで入学してくる子もたくさんいます。

 ところが、SAPIXに通う子達にとっては、下3分の1という位置付けで見られてしまう……。 

 残念なのは入学後です。中堅校受験をボリュームゾーンとする四谷大塚や日能研に通いながら、これらの学校を目指してきた子ども達は、「よし! 僕は第一志望の学校に合格したぞ! 今まで頑張ってきたから、合格できたんだ。中学に入ってからもがんばるぞ!」と、イキイキとした表情で入学してきます。一方、SAPIXに通っていた子は、「どうせ僕はこの程度の学校にしか行けないんだ……」と、暗い表情で入学してきます。どちらが入学後、学校生活が楽しめ、学力が伸びていくかは想像できますよね。

 もちろん、SAPIXに通っていても、本人がその学校に行きたいという気持ちがあればいいと思います。しかし、本人にその気持ちがあっても、お父さんが「偏差値40台の学校だなんて……」と口に出してしまうと、子どものやる気を削ぐことになります。そして、中学受験、入学後と子どもを苦しめ続けてしまうのです。

とにかく偏差値50以上の学校に入れたい

 地方名門校出身のお父さんは、娘の学校に対しても同じような反応をします。カナミちゃんもSAPIXに通う6年生。夏休みに入り、いよいよ第一志望校を選ぶ段階にきています。カナミちゃんの行きたい学校は、SAPIX偏差値49の鴎友学園。5年生の時に観た運動会のムカデ競争に感動し、「この学校に行きたい!」と強く思うようになりました。

 ところが、お父さんは「偏差値40台かぁ……」と難色を示します。そして、「せめて偏差値52の吉祥女子くらい行ってくれよ」と言うのです。鴎友学園も吉祥女子も明るく活動的な女の子が集まるとてものびのびとした学校です。どちらの大学合格実績もよく、首都圏では人気のある女子校です。それなのに、カナミちゃんのお父さんは、なぜ吉祥女子を薦めるのか? 

 そこには偏差値50の壁が存在します。

 先にもお伝えしましたが、地方の名門校と言われる学校は、偏差値70レベルの難関校です。そういう環境で過ごしてきたお父さんにとって、偏差値50以下というのは、“勉強が苦手な子が集まる学校”という高校受験のイメージを払拭することができません。難関校狙いの子が集まる中学受験塾の模試だから、偏差値が低く出てしまうのは分かる。でも、せめて真ん中よりは上であって欲しい。その思いが偏差値50の壁を作ってしまうのです。

 では、なぜそこまで偏差値に取り憑かれてしまうのか?

 一流企業、一流の職業に就いている人というのは、ほとんどが高学歴です。つまりエリート集団ということですね。そういう環境に身を置いていると、学歴こそがすべてと思ってしまいがちです。そのため、わが子を中学受験させる人が多い。すると、社内でも自然と中学受験の話が耳に入ってきます。

 「○○さんのお子さんは御三家の開成に通っているらしい」

 「○○さんのお子さんは、サピのアルワン(SAPIXの中で一番優秀な子が集まるクラス)で偏差値70の筑駒を狙っているらしい」

 そんな話を聞いてしまうと、同じ塾に通っているわが子が偏差値40台の学校にしかいけないなんて言えないし、言いたくない。つまり、自分のプライドが許せないだけなのです。


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